とうとうここまで来ました。現行製品で25万3千円という値段のアルトサックス用メタルマウスピース、セオ・ワニブランドの「ULTRA DURGA」。全世界30本限定生産ということですが、20万円を超える価格とは驚愕です。かたやネットでは、4千円前後でアルトメタルが購入できます。このような安いマウスピースと高いマウスピース(というか、普通の値段のマウスピース)の違いはどこにあるのでしょう。
工業製品の価格は、企業が活動を維持するために、この金額で必要な利益を出したい、という金額です。ヴィンテージマウスピースのように、欲しい人が、「買えるならこの金額を出す」という「競りの結果」の価格ではありません。新品の製品の価格には理由があり、それが製品の性能に表れています。
一番分かり易いコスト要素は「原材料」です。「振動」が重要な要素であるマウスピースでは、望ましい振動性能を持つ素材が重要です。メタルでもラバー系でも、ある程度の価格のマウスピースのメーカーは、深い研究の成果としてそれぞれ素材を厳選しています。かたや安価なマウスピースの材料基準は、入手し易く加工し易い、が基本です。素材が柔らかいため、ちょっとした打撲で凹んだり、温度変化で歪みが生じたりするものもあります。
また研究開発費も価格に大きな影響を与えます。多くのメーカーは多大な設備や研究組織、長年のノウハウ等の技術をマウスピース開発に投資します。そしてその投資は製品から回収しなければなりません。良いマウスピースの開発にはお金がかかります。しかし多くの廉価版マウスピースは、他社のマウスピースを測定して、そのデータをもとに設計されるものもあるようです。
製造原価も価格の原資です。製造に関わった人や機械のコスト、検品の方法や包装の複雑さ等、細かく積み上げればかなりの金額です。材料の加工、仕上げの方法は多種多様ですが、一番分かり易いのが「加工精度」です。簡単に言えば、マウスピースを精密に加工するほどコストがかかります。
逆にコストがかからないのが、精度の低い加工方法です。安価なマウスピースでは、立つべきエッジが丸まっていたり、左右のバランスが異なっていたりと、精度管理に難があるものが多いようです。
別に言い訳するわけではありませんが、安価なマウスピースでも、「使えるもの」は少なくありません。最初から「当たり」を引く場合もありますし、ちょっと削ったり、ヤスリ掛けしただけで、かなり鳴るようになるものもあります。
安価なマウスピースと、そうでないマウスピースの差が表れる最大の違いは、「サウンドの個性」だと思います。鳴る、鳴らないはマウスピースの基本機能ですが、多くのメーカーはそれに加えて、独自のサウンドカラーをそれぞれ追及しています。そしてサックス奏者の多くは、そのブランドやモデルが持っているサウンドのカラーに大きな信頼と期待を寄せています。
サックス奏者はマウスピースのサウンドカラーにお金を払っているのでは、と思うのは私だけでしょうか。
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