私たちが愛する「音楽」について言葉で表現するとき、どうしても比喩表現を用いざるを得ない場合が多くあります。
音楽を聴き、評するときに多用される比喩表現ですが、「音楽を作る」側、我々楽器奏者の振る舞いにおいても、やたらいっぱい比喩表現が存在します。あるものは素直に理解出来ますが、「???」となる比喩表現も少なくありません。サックス奏者の比喩表現について考えてみましょう。
サックスを始めたときに、さんざん先生に言われたのが、「暖かい息を吹き込んでサックスを鳴らしてください」、ではかったですか?「暖かい息って、何?」、と思いませんでした?口腔を広げて、しっかりと腹筋で支えた息をゆっくりと吐く、ということを、「手のひらを温めるときの、「はあー」という息の感じで吹いてね」、という比喩表現な訳ですが、その比喩が必ずしもサックス演奏の正しい呼吸を導ける訳でもなく、単に、「最初のハードルを低く」、という目的の比喩でしかないかもしれません。「分かり易く」のための比喩が、かえって分かり難くしている例かもしれません。
奏法関係でもう一つ挙げれば、「音を遠くへ飛ばす」ですかね。遠く離れていても聴こえるような、芯のしっかりある、遠達性の高い音質をイメージして吹け、ということなのですが、先輩に最初に言われたときには面喰いました。「音って飛ぶんですか?」、「どこに落ちるんですか?」、なんて質問した覚えがあります。笑い話ですね。
サウンドを表現するときにも、比喩表現は大活躍です。「君の音は死んでるね。もっと命を吹き込まなくちゃ」とか、「あー、音が固いよ。もっと丸い音で吹いてね」、なんて言われたことがあります。
指導・指示として分からなくもない表現ですが、「私はそんな風に聴こえるから、そうじゃないように聴かせたいなら、何か工夫が必要かもね。」、くらい付け加えても良いような気がしますよね。演奏者に音楽について何かを伝えたいための比喩表現なら、それなりの思いやりを忘れたくないものです。こういう比喩には、ちょっとキツイものが多いですから。音楽の指導者の皆さん、よろしくお願いします。
楽器関係のカタログにも比喩表現は溢れています。「50年代のニューヨークで流行した、暖かくて深みのあるスモーキーなサウンドを再現した」云々、「おおらかで丸みのある、あらゆるシーンに対応できる豊かな音色」云々、「銀メッキは音色が太くまとまり、金メッキは華やかな音色で伸びのあるサウンドが特徴です」云々。
良く考えると、分かるような分からないような、当たってるような当たってないような、正しいような正しくないような、なんとも微妙な比喩表現が沢山有ります。
しかし「音」という目に見えず、すぐに消えてしまうものを言葉で表現するには、絶対に必要な言葉の使い方、それが比喩表現です。そして比喩表現の向こうには、比喩で説明している「真実」が必ずあります。
我々、サックスという楽器の演奏によって音楽を作り出す人間には、比喩表現を適切に使いこなし、かつ過剰に振り回されない、「真実」に重きを置いた姿勢、そんな比喩表現との付き合い方が重要なのかもしれません。
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