大昔のマウスピースは、金型にエボナイトを流し込み、焼き固めて型から抜き、やすりで調整して仕上げる、という、とても原始的な方法で作っていました。何から何まで、熟練の職人による手作業でした。
そんなサックスのマウスピース製造は、今では最先端のコンピュータ制御の製造技術が支えています。最先端のマウスピース製造技術を探っていきましょう。
最近、マウスピース製造方法で注目されているのは、なんといっても「3Dプリンタ」でしょう。フランスの人気マウスピースメーカー、Syos (サイオス)は樹脂射出型の3Dプリンタで自社のマウスピースを製造していることを公表しています。また高級ハンドメイドマウスピース作家、ゲイリー・シュガル氏も3Dプリンタで作った樹脂製マウスピースを販売しています。樹脂製マウスピースは、かつては金型による製造が主流でしたが、装置や素材の性能や品質が向上し、3Dプリンタによる製品も増えてきたようです。
最近注目の練習用電子サックス、「Travel Sax 2」の製造にも3Dプリンタが使用されています。デジタルデータをもとに、意のままの立体物を高精度に作成できる3Dプリンタの技術は、少量多品種の精密機械製造の世界ではすでに歴史が古く、色々な方式の製造装置が存在します。エポキシ系樹脂や金属で成形できる3Dプリンタも既に存在しますので、サックス・マウスピースの業界でも、益々素材の可能性が広がっていくのではないかと思われます。
「素材を積み上げて作成する」3Dプリンタと異なり、デジタルデータをもとに「立体物を削り上げていく」のが「NC加工装置(エヌシー・かこうそうち)」です。
NCとは数値制御(Numeric Control)の意で、コンピュータからの数値データをもとに、素材の塊を切削加工する高精度加工機械の総称です。なかでも「5軸マシニングセンタ」と呼ばれる装置は、x/y/zの立体3軸に加え2つの回転軸を有し、多様な切削工具(フライス、エンドミル、ドリル)を自動的に交換しながら、超複雑かつ高精度な立体物を、多岐に渡る素材で削り出すことができます。マシニングセンタによる加工の精度は、一般的に±3~5μm(μmは0.001mm)の寸法公差まで対応可能で、仕上げ加工が不要なほどの精度で製造することが出来ます。
現在の高価格帯の樹脂系、メタル系のサックス・マウスピースは、かなりの確率でマシニングセンタによって加工されていると言って良いでしょう。
3Dプリンタもマシニングセンタも、形状のもとはデジタルデータです。3DCAD(スリーディーキャド)と呼ばれる設計ソフトウェアでデザインをおこない、データを作成しますが、ここで注目したいのが、3Dスキャナによるヴィンテージ・マウスピースのレプリカデータ作成です。
多くのメーカーが今でも人気の銘品ヴィンテージ・マウスピースの形状を3Dスキャンし、そのデータを基にデジタル造形した「ヴィンテージレプリカ」を販売しています。
近年、小型で高精度な低価格レーザー光式3Dスキャナが数多く発売されており、マウスピースのような複雑な内部形状の高精度スキャンが、比較的手軽になったようです。サックス業界も、「時代はデジタル」なのですね。
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