サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。また数多くのサックス関連アクセサリーも販売されています。サックスやアクセサリーを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「ダンパーコルク」です。
ダンパーコルク?なんじゃい?ですよね。ネックコルクはお馴染みの名前だと思いますが、「ダンパー」なんていうのは聞き慣れませんよね。正直、あまり使わない言葉です。これは、サックスのあちこちに使われている、「衝撃吸収」のための小さなコルク片たちの名称です。コルクはサックスを始め、管楽器には欠かせない素材で、金管楽器ではウォーターキー(唾抜き)の栓としてや、クラリネットやオーボエ等にはダンパーに加え、管のジョイントコルクとしても使われています。
コルクは、コルクガシの樹皮のコルク組織を剥離して加工した、弾力性に富む素材の総称で、空気をよく含み、軟らかく、衝撃を吸収する能力があります。コルクガシは地中海性気候を好み、南ヨーロッパや北アフリカに分布しており、イベリア半島をはじめ、イタリアなどがコルクの産地として有名です。コルクガシは植樹後、数年で1回目の剥ぎ取りをおこないますが、この時に得られる樹皮(バージンコルク)は表面に亀裂や凹凸が多く、加工製品の素材としては適しません。その後数年ごとに再度厚く成長した樹皮を剥ぎ取っていき、2回目以降に得られた樹皮は表面が平滑で均質性の高い材質となり、打ち抜いてワインなどの瓶の栓や、クッション床材等のコルク素材として利用されます。ワイン栓や素材の加工の際に残った樹皮は粉砕し、接着剤を加えて圧縮され、圧搾コルクとして利用されます。圧縮コルクは崩れ易く、ひび割れもし易いので、サックス等の楽器にはほぼ使用されません。ネックコルクやダンパーコルクに圧縮コルクが使用されているものがあったら、その楽器は必ずトラブルを起こしますので注意してください。
コルクは多孔質で弾力性があり、水をほとんど通さず、通気性はわずかにあり、保温性に優れています。天然ゴムや石油系化合材料が広く利用されるようになるまで、欧米圏において緩衝材や密閉材として重要なものでした。管楽器への使用も古くからおこなわれており、現在ではゴム系の接着剤で金属パーツに接着されていますが、古くはニカワ等の天然接着剤で貼り付けられていたようです。サックスは金属パーツが連動し合ってキーアクションをパッドに伝えます。そのため随所に「金属のぶつかり合い」が生じます。そこの衝撃と音を吸収するのがダンパーコルクですので、強力な接着剤で金属に貼り付けられています。たまに接着材の劣化でダンパーコルクが欠落し、サックスが突然ガチャガチャと異音を発することがありますが、そんな場合は迷わずリペア工房に持ち込んでください。慣れない素人が直そうとすると、コルクの位置が不適切だったり、接着剤を他の部品に着けてしまったりと、その後のトラブルの原因となります。ダンパーコルクは、小さくてもかなり重要な役目を担っているのです。
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