サックス 本体

ソプリロの世界

サックスには多くの種類があります。一般的な楽器屋さんに並んでいる4大サックス、アルト、テナー、バリトン、ソプラノに加え、ちょっとレアなソプラニーノ、バス、また特殊サックスの部類に入るソプリロ、ストレートアルト、チューバックス、サクセロ等を入れたら、かなりの種類になります。
各々のサックスには、それぞれ独自の個性や表現力があり、それぞれのサックスの奏者はその独特な世界を堪能しています。今日はそんな数多くのサックスの中から、「ソプリロ」に焦点を当て、その魅力ある世界をご紹介しましょう。

ソプリロは、なんとソプラノサックスの1オクターブ上の音域をカバーする、超高音担当のB♭調のサックスです。ソプリロという呼称は、ドイツのミュンヘンにある、高音域と低音域の特殊木管楽器製造に特化した楽器工房、ベネディクト・エッペルスハイム社(Benedikt Eppelsheim Wind Instruments)の製品名称で、一般的にはピッコロ・サックスとも呼ばれています。
ソプリロは全長309mmで管体重量は371g。ソプラノの中音B♭から2オクターブ上の超高音E♭までのキーが付いています。通常のサックスであればネックに付くはずの第2オクターブキーが、あまりにも全長が短いのでマウスピースに小さな穴が開いており、その穴をレバーが開閉する仕組みになっています。当然各キーも接近しており、指貝の間の間隔はとても短く、手の大きな人では二つのキーを同時に押さえてしまうくらいです。
ベルは二番管に胴輪で接続されており、構えた時にやや上向きになるように設計されています。パッドは一般サックス用のような皮革ではなく、柔らかな合成ゴムのような素材で作られており、トーンホールへの密着性を高めています。B♭サイドキーとF#トリルキーも小さいながらちゃんと付いています。リードはE♭クラリネットやソプラニーノ用のものが使用できます。
エッペルスハイム社のサイトのソプリロの紹介ページには、「注意:ソプリロは、その極限的ともいえるポジションと、強靭なアンブッシュアが必要不可欠であるため、熟練のプレーヤーにのみふさわしい楽器であります。」、と注釈されています。はい、とっても演奏が難しいサックスのようです。

とはいえ世界には、天才的な才能を持ったサックスプレーヤーが沢山います。英国国立サクソフォン合唱団の創設者であり10年間その音楽監督を務めた、イギリスのサックス奏者、ナイジェル・ウッド(Nigel Wood)は「ソプリロの第一人者」とも言われています。ソプリロをフィーチャーした曲、「ワルツィング・ソプリルダ」を2006年の世界サクソフォン会議で演奏し、絶賛を得たことに端を発し、その後ソプリロに特化した作品のアルバム、「ソプリロジー」を発表するなど、ソプリロの魅力を伝える演奏活動をおこなっています。
また日本では、東京音楽大学音楽学部出身の各川芽(おのかわめぐみ)がソプリロ奏者として有名です。数多くの演奏会、レコーディングなどに参加する等、ソリストとしての活動の他に、サックスデュオ、トラクシオン・アヴァンのメンバーとして数々の演奏活動をおこない、またサクソフォンラージアンサンブル「ISLE」でも、ソプリロ奏者としても活動しています。
ナイジェル・ウッド、各川芽のソプリロの演奏はYouTubeでも聴くことが出来ます。その素晴らしい演奏は、サックス奏者でなくてもびっくりすると思います。

 

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