サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。また数多くのサックス関連アクセサリーも販売されています。サックスやアクセサリーを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「コルクグリス」です。
サックスケースの小物入れの中には、絶対一つは入っているサックス系小物のひとつが「コルクグリス」です。コルクグリスを使ったことのないサックス奏者は、皆無と言って良いでしょう。木管楽器全般の必需品です。かなりの数の楽器メーカーやアクセサリーメーカーが、それぞれのコルクグリスを販売していますが、そのほとんどはリップスティックタイプです。セルマー、バンドーレン、ヤマハ、ヤナギサワ、ダダリオ(リコ)等、馴染みの深いメーカーから、だいたい600円から1,000円程度の値段で出ています。サックスの維持・保守に欠かせないコルクグリスですが、その影が薄いことは否めません。しかもそんなに消費するものでもないので、いつ買ったか忘れるぐらいに長持ちします。一本を10年以上も使っている、というサックス奏者も少なくはないでしょう。
存外にないがしろにされている感じのコルクグリスですが、その役割を真面目に考えると、使い方を見直すべきところも有りそうです。コルクグリスはネックコルクに塗り、マウスピースが差し込み易く滑るのを助けるのが役目です。しかしこのマウスピースとネックの「接点」の状態は、かなりサウンドに影響を及ぼします。マウスピースの振動は、ネックからサックス本体にどれだけ伝わるかによって、サックス全体のサウンドが影響を受けると言われています。それ故、ネックコルクをネックに接着する接着剤は、振動を吸収しやすいゴム系接着剤より、硬くて振動を伝え易い「シェラック(タンポをカップに接着する、熱で溶ける貝殻由来の接着剤)」を使用するのが良いとされています。そしてネックコルクの径は、マウスピースに「キツめのピッタリ」に調整されます。マウスピースとの隙間が必要以上にあると、空気が漏れるだけでなく、振動も伝わり難くなってしまいます。またネックコルクには、合成コルクでなく、振動伝達と形状反発性に優れた、天然コルクが通常使用されます。そんな重要な「隙間」に塗るコルクグリスですので、塗り過ぎには要注意です。コルクグリスは、「マウスピースを差し込むとき、またチューニングで出し入れする際」にだけ、滑り易くなってくれれば良いのです。ネックコルクにコルクグリスを擦り込んで、コルクにグリスを浸み込ませようとする方がいますが、これはコルクに「柔らかさ」を必要以上に与えてしまうので良くないようです。同じ理由で、マウスピースを抜いた後は、ネックコルクのグリスは拭っておくほうが良いでしょう。グリスは少量をネックコルクに塗布し、指で優しく延ばしてあげるのが良いでしょう。せっかくスティック型になっているので、「指で延ばす」のを敬遠しがちですが、そこは自分のサックスのサウンドのために我慢してください。ちなみにスイスのLa Tromba社のスライド・コルクグリスは、「サックスの音が良くなる」、と一時期話題になったこともあります。たかがグリス、されどグリスです。
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