「新品のサックスは、半年くらい吹き続けないと抜けてこないよね」とか、「いやあ、このサックス、良く抜けてるね。さすがヴィンテージ」とか、「僕のサックス、抜けが悪いみたい。故障してるのかな」なんてコメント、聞いたことがありませんか?
管楽器を吹いていると、「抜け」とか「音抜け」という言葉をよく聞きます。この「抜け」とは何なのでしょうか。
管楽器は「吹いて音を出す」という構造上、演奏者の「吹いているときの感覚」が楽器の性能のひとつに良く上げられます。要は「吹いていて気持ち良い」か「あまり良くない」かという、感覚に影響する楽器の反応です。「息が入らない」、「息を持っていかれる」、「息に抵抗感がある」、「息の効率が良い」等に類する、というかまとめた感覚が、「楽器が抜けてる」でしょうか。
大昔は、「新品のサックスは、各部品が振動に馴染んでないので、半年くらいは楽器を鳴らすことを考えて吹き続け、振動に馴染ませないと楽器が抜けて来ない」なんて真面目に言われていました。それらしい経年変化は多少あるのかもしれませんが、昔も今も、楽器メーカーは最初からちゃんと性能が出るように製造して、検査して、出荷しています。ですのでこの「半年熟成」は結果として感じたとしても、一般論としては100%正しい訳ではないと思います。
これと同様に、長年吹き込まれたヴィンテージ楽器は、「抜けが良い」と評されることも多いようです。これも良く考えれば、「今も愛用されている質の良いヴィンテージ楽器なので、音が出し易い良い楽器」、というだけなのかもしれません。
サックスの「抜け」、とは何なんでしょう。管楽器と付き合っていると、不可思議な「感性的表現」が良く出てきます。「音を遠くへ飛ばす」とか「温かい息を吐く」とかいうやつです。これらの難解な表現は、逆を考えるとうまく理解できる場合があります。「音を近くへ落とす」吹き方や、「冷たい息」の出し方を考えると、「ああ、その逆か。やっちゃいけない事を暗に示しているんだな」、と分かります。そうやって「抜けてる」を考えてみましょう。
そもそも楽器管体に流れる空気の量なんて、奏者に分かるわけがありません。「抜けてないサックス」とは吹いていて、思い通りに音が出てくれない楽器の状態でしょう。吹き込んだ息が、期待通りに音に変わってくれていない状態、それが「抜けてない」という感覚かもしれません。
「抜けてる」、「抜けてない」の感覚は、楽器の習熟度によっても違うのはここがポイントです。初心者が「楽器の抜け」に言及することはほとんどありません。期待に即したバランスで、入れた息に対してある程度の音量が出てくれる楽器、それが抜けの良い楽器なのではないでしょうか。このとき「音色や音程」は、まったくとは言いませんが、別の尺度と考えたほうが良いでしょう。
サックスは「育てる楽器」とも言われています。定期的な調整も必要だし、奏者の習熟度、嗜好に応じて、種々のセッティングも変わってきます。演奏技術がちょっと上達しただけで、とんでもなく良い音が出たりします。いろんな経験や努力、時間経過で、自分のサックスは「自分向け」に「抜けていく」のではないでしょうか。
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