サックスには多くの種類があります。一般的な楽器屋さんに並んでいる4大サックス、アルト、テナー、バリトン、ソプラノに加え、ちょっとレアなソプラニーノ、バス、また特殊サックスの部類に入るソプリロ、ストレートアルト、チューバックス、サクセロ等を入れたら、かなりの種類になります。
各々のサックスには、それぞれ独自の個性や表現力があり、それぞれのサックスの奏者はその独特な世界を堪能しています。
今日はそんな数多くのサックスの中から、プラスチックサックスに焦点を当て、その魅力ある世界をご紹介しましょう。
ご存知のように、ほとんどのサックスは真鍮(しんちゅう)等の金属素材で作られています。しかし多くの工業製品が、金属素材からより軽く丈夫で加工し易いプラスチックに変化してきたように、サックスにもプラスチック素材のものが存在します。
そして意外にも、プラスチック素材のサックス、プラスチックサックスの歴史は長いのです。その歴史は1950年に発売されたアクリル製のサックス、「グラフトン」(アルトサックスのみ)から始まりました。
ロンドン在住のイタリア人、ヘクター・ソマルガによってデザインされたこのサックスは、彼の住所であるグラフトン・ウェイにちなんで名付けられました。グラフトンは当時の伝統的な真鍮製サックスの約半額、55 ポンドで販売されたそうです。
グラフトン・サックスは、チャーリー・パーカーやオーネット・コールマンが使用したことで有名になったにもかかわらず、市場には受け入れられませんでした。その理由は「故障のし易さと、メンテの難しさ」です。管体に使用されていたアクリル樹脂は割れ易いため、楽器全体が非常に壊れやすい楽器でした。
金属製のサックスと比較すると、グラフトンはオーバーホールや修理が難しく、高価でした。まあパーカーもオーネットも、販売店からお金を貰ってグラフトンを吹いたり、安いサブ楽器として準備していたらしく、楽器を評価して使用していた訳ではないようです。
発売から10年後の1960年に販売を終了し、そのほとんどは破損・廃却されており、今ではコレクターの展示品として数本が残るのみとなっています。プラスチックの性能が必要充分になる前に「出てしまった」、早すぎるプラスチックサックスだったようです。
そして時代は2010年代初頭、タイのベンチャー企業「Vibrato(ヴァイブラート)」がポリカーボネート製のアルトサックスを発表しました。
プラスチック素材の優等生、ポリカーボネートを使用しているため、金属に匹敵するほどの堅牢さ、かつ超軽量を実現。メカニズムも熟考されており、壊れにくいコイルスプリングを使用したり、指の力でトーンホールに密着するスポンジ製パッド等の斬新な技術で、世界のサックスユーザーの注目を浴びました。ホワイト管体にグリーンやオレンジのパッドがデザインされたカラフルなものや、透明樹脂のスケルトンモデルも発売されています。
近年、テナーサックスも発売され、なんと自分で組み立てる、「プラモデル版」も併売されています。ランナー(四角い型枠)にサックスの部品がびっしりと付いているのは、もう圧巻です。重量に比例してサウンドが軽いことや、音程が取りづらい事等で、ステージで使用しているのはあまり見かけませんが、初心者用、練習用サブ楽器として人気があるようです。
リード式のリコーダーや、プラスチック製の金管楽器が続々と登場している今、ステージで使えるほどのプラスチックサックスが発売されるのも、そう遠くないでしょう。
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