サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。また数多くのサックス関連アクセサリーも販売されています。サックスやアクセサリーを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「バッフル」です。
バッフルとはサックスの部品ではなく、マウスピースの口に咥える側の上部内壁の部分の名称です。いわゆる「マウスピースの天井」です。振動するリードの反対側にある部分ですので、バッフルの形状によって、そのマウスピースのサウンドのキャラクターが大きく変わります。マウスピースを選ぶ際には、そのマウスピースのバッフルが、「ハイバッフル」なのか「ローバッフル」なのかを最初に確認するのが定石です。
ハイバッフルは厚いバッフルで、リード側に膨らんだバッフル形状です。逆にローバッフルは薄いバッフルで、リードから離れているバッフルです。リード側を下に見ると、ローとハイ(高い低い)は逆なのですが、ひっくり返してリード側を上に見て、ローかハイかと称しているようです。
ハイバッフルはリードとの距離が近いため、リード、バッフル、サイドウォールで作る息が通る空間の容積が小さくなります。そのため吹き込んだ奏者の息にはスピードが乗り、マウスピースのサウンドはシャープになり、力強く明るいエッジの効いた音が得られます。そのためハイバッフル系のマウスピースは、ロックやフュージョン、ポップス系のジャンルで好まれます。
ローバッフルでは逆に、息が通る空間の容積が大きくなり、柔らかく温かみのあるサウンドが得られるので、トラディショナルジャズやクラッシック系の音楽で好まれます。またバッフルの高さに加えて、その形状でもサウンドは変わります。
バッフルの形状は大きく分けて4種類あり、先端からスロート(喉:マウスピース後部)に向かって、直線の傾斜を持つ「ストレート型」、緩やかな放物線を描く「ロールオーバー型」、段差をつけた「ステップ型」、放物線状に急激に落とし込んだ「バレット型」がありますが、それぞれのマウスピースメーカーが、細かな特徴あるデザインを採用しています。
マウスピースのサウンドを決めるバッフルへの工夫は、様々な形で古くからおこなわれています。そのひとつが「スポイラー」です。バッフルに別の部品を装着し、同じマウスピースでサウンドの変化をさせてしまおう、という部品です。Jody Jazz ESPというマウスピースは、へら用の金属部品が添付されており、この部品でバッフルのスロープの角度が変わります。
また伝説のマウスピース設計者、アーノルド・ブリルハート氏の名作、Brilhart Level Airにはいくつかのプラスチック製のスポイラーが付属し、バッフルの形状全体を変化させる設計になっていました。またプレーヤーによるバッフルの改造も珍しくありません。テナーの巨匠、ジョン・コルトレーンは、チューインガムでバッフルの高さを調整していたことで有名です。
バッフルはマウスピースに入った息の入り口であり最初の通り道です。細かな傷だとしても、空気の流れを変えてしまい、サウンドの劣化につながる場合もあるので注意してください。
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