サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。また数多くのサックス関連アクセサリーも販売されています。サックスやアクセサリーを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「サムレスト」です。
「サムレストってどこの部品?サムフックじゃないよね。サム:親指、レスト:休む。ああ、左手の親指置いておくとこね。」、なんて言われるほど、サムレストはサックスの中でもかなり地味な部品かもしれません。
サックスの親戚のリコーダーやクラリネットでは、左手親指はしっかりトーンホールを押さえる役目があります。フルートでは管体を支えるのは左手人差し指の根本で、親指は「回転留め」程度の役割です。ファゴットでは、左手親指が担当するキーは10~11個もあります。
なんにせよ、サムレストなどという、一見のんびりした役目の部品はサックス特有のものです。とは言え、サムレストに左手親指を置かないと、他の四本の指の動きに力が入りません。サムレストがあるゆえに、「挟む」感覚で、スピーディーに指でキーを押さえることが出来ます。またオクターブキーへ親指をずらす為の出発地点、という重要な役割もサムレストは担っています。
サムレストはサックスの歴史の中で、長い間軽視されていたと言っても良いでしょう。ヴィンテージサックスの初期時代には、指貝を施した金属部品を使ったモデルも数多くありましたが、セルマーMark VIの時代になると、ただのプラスチック部品になりました。同様にサムフックもプラ製が主流になりました。
この時代がしばらく続きましたが、90年代末期、いくつかのアクセサリーメーカーが、「サムレストの材質や取り付け方で、サウンドや吹奏感が大きく変わる」ことに気が付きました。金属製のサムレストとサムフックが開発され、サムフックは管体の台座にネジで固定する方法が採用されました。
それまでプラ素材のサムレストが接着剤で管体台座に接着されていただけなのに対し、ネジ止めの金属サムレストは音響的な効果を大きく変化させました。金属製のサムレストは、やや高価なアクセサリーであるにも関わらず、またたく間にサックス奏者の間に広まりました。
近年ではシャープな音を望むポップス、ジャズ系のサックス奏者のほとんどが、金属製サムレストにしていると言っても良いかもしれません。そして今ではマイルドな音を目指したエボナイト製のサムレスや、ふくよかで温かい音を狙った925銀製のサムレストも出回っています。天然石で装飾した、カラフルなサムレストも人気が高いようです。
サムレストは今やサウンド作りやステージ映えにも大きく寄与する、重要なサックスパーツであると言えるでしょう。たかがサムレスト、されどサムレスト、です。
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