サックス奏者のほぼ100%がかかる病気、マウスピース病。マウスピースというちっちゃな部品のくせに、サックスのサウンドや吹奏感を大きく左右するマウスピースに対し、サックス奏者は常に「より良いサウンド」、「より良い吹奏感」、「より良い見た目」、「あのサウンドの実現」等、無数の期待を寄せています。そしてその期待を実現すべく、マウスピースを改造したり、新しいマウスピースを試したり、セッティングを変えたりと、サックス奏者は常にマウスピース探求の旅を続けています。
この「マウスピース病」は、100年前のジャズ創成期に、サックスが音楽の主役級楽器として光を浴びてから現在に至るまで、ほとんどのサックス奏者の悩みの種、そして同時にかけがえのない楽しみになっています。このマウスピース病の今昔(いまむかし)を掘り下げてみましょう。
テナージャイアント、ジョン・コルトレーンがマウスピース改造マニアだったことは有名です。バッフルにチューインガムを貼り付けてハイバッフルにしてみたり、逆に内部を削ってマウスピースをおしゃかにしたなどと伝えられています。
この頃の多くのミュージシャンは数少ないマウスピースのモデルの中で、このような独自の改造をしていたようです。樫の木でバッフルを擦って研ぐ、シャンクに針金を巻く、なんて技も一般的だったようです。
時代が進み、多くのメーカーから星の数ほどのサックスマウスピースが発売されるようになりました。いずれもが個性的なデザインで、独自のキャラクターを持つ魅力的なマウスピースが市場に出回るようになり、サックス奏者はマウスピース評論家と化しました。
あれやこれやと噂のマウスピース、魅力的なマウスピース、そして新製品を試奏しまくり、ビビッと恋に落ちて購入。そしてしばらくしたらまた別の出会いがあり、悩んだ末に買い替え。そんなことの繰り返しで、気が付いたら引き出しの中には十数本のマウスピース。これが近代のマウスピース病の典型でしょうか。
マウスピースと組み合わせるリガチャーも数多く出回っているので、試すべきセッティングの種類は星の数ほどになるでしょう。多くのサックス奏者は「試奏マニア」であり、楽器屋さんの「常連」になりがちです。サックス奏者の慢性金欠病の原因は、リードの購入費だけではないようです。
サックス奏者のマウスピース病の症状のひとつに、「ヴィンテージ熱」があります。「古き良き時代の銘品ヴィンテージマウスピースを吹きたい」、「しかし恐ろしく高価」、「ならば近いものが欲しい」、「レプリカを探す」、というものです。
多くのマウスピースビルダーが伝説のヴィンテージマウスピースを研究し、独自の技術でそれらを模倣したマウスピースを販売しています。オットーリンクのスラントシグネチャーや、NYメイヤーのアルト、Dukoff Dモデル等は、数多くの「トリビュートモデル」がリリースされています。同一のメーカーからは、堂々と「復刻モデル」として発売されていることもあります。
そして近年では研究が進み、かなりの精度での「複製」も可能になっているようです。精密な3Dスキャナーでヴィンテージマウスピースそのものを三次元測定し、近似物性の樹脂で3Dプリントしたものが人気を呼んでいます。サックス奏者のマウスピース病は、益々悪化するばかりです。
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