サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。サックスを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「キーポスト」です。
キーポストは、サックスのメカニズムを支える土台となる、最も堅牢性(けんろうせい)が求められる重要な部品です。円錐柱状の細長い棒の先端に、球の対向する2面を平行に削ぎ取り、そこに穴をあけたシャフト受け(もしくはロッド受け)が付いており、この部分で、サックス操作の運指をパッドの動きに連動させるシャフト(ロッド)を受け止めます。
シャフトは回転運動で運指動作を伝達しますが、その両端をスクリューで固定している部分がシャフト受けです。また先端のボールに大きな穴が開いており、シャフトを貫通させて支えるキーポストもあります。従ってキーポスト先端の位置が少しでも狂うと、シャフトにねじれが生じ、その回転に連動するパッドの動きが適切でなくなります。
長いシャフトではパッドカップの位置が大きくズレてしまう場合さえあります。またシャフトを繋ぐ二つのシャフト受けの中心がズレれば、シャフトの留めネジがシャフトを削ってしまい、シャフト自身がガタガタになってしまうこともあります。このように「位置精度」が非常に重要なシャフト受けを支えるキーポストは、強度を高める台座を介して、サックス管体に垂直にロウ付けされています。
キーポストのロウ付けには、融点400℃程度の半田が使われ、非常に頑丈に取り付けられます。このように位置精度が重要なキーポストは、調整や修理でサックスを完全分解する際も、管体に取り付けたままでおこなわれることがほとんどです。
ストレートに伸びた二番管から、無数のキーポストがにょきにょき生えている見た目は、まるで鬼のこん棒かハリネズミ、もしくはウォーキングデッドシリーズの悪役ニーガンの凶悪武器、「ルシール(バットに有刺鉄線を巻いたもの)」です。(分かんないかな?)
キーポストの先端は、サックスの部品の中でもかなり外側に出ている部品です。サックスを右側に寝かせて床に置いたとき、キーポストの先端が床に触れ、シャフトやキー等に不用意な力を受けることを防いでくれます。ということは、誤ってサックスを転倒、落下させてしまった場合は、逆にキーポストは悲惨な結果を呼びます。
床からの衝撃はキーポストの頂点一点に加わり、台座に大きな力が掛かって管体を変形させます。台座は管体に対して広い面積でロウ付けされていますが、転倒の衝撃がある程度以上大きい場合には、管体にはかなりのダメージが伝わります。このような事故による管体の歪みは、表側からは視認し難い場合が多く、管体裏側からしか分からない凹みだったり、微細なキーポスト頂点のブレだったりします。
いずれの場合もサックスの機能・性能に不具合を起こしますので、キーポストがらみの事故を起こしてしまった場合は、速やかにリペアマンに相談することをお勧めします。
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