サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。サックスを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「ネックレシーバー」です。
ネックレシーバーは文字通り、サックスのネックを本体に接続するための「受け口」です。本来一本のパイプであるべきサックスを、収納や取り扱いのためにネックと本体を分解可能にし、演奏時に接続するという仕掛けの要(かなめ)の部分です。
2本のパイプを繋げるのですから、息漏れ防止のパッキンや、グリス等を塗りたいところですが、振動の伝達に不具合が生じるため、1/100mmレベルの精度の加工技術で、2本のパイプをぴったりと嵌合(かんごう・はめあい)させ、ネジで固定する仕組みになっています。ですのでネック側のソケット(テノン、抜き差し管とも呼びます)と、それを受けるネックレシーバーの形状、表面の平滑度の不具合は、サックスの機能に大きく影響します。
ぐらつき無くスムースにはまり、すこし粘り気味で回転し、ネックスクリューを少し締めただけでぴったりと固定する、そんな状態が適切です。グリスやオイルは通常差しません。接合時、また分解時には柔らかい布でソケット側、レシーバー側を軽く拭って、埃を取っておくのが良いでしょう。
ネックレシーバーはサックスの鳴りに大きく関わる部分なので、レシーバーを締め込む「ネックスクリュー」は、その形状や材質で大きくサックスのサウンドに影響を与え、音質改良アクセサリーとして人気があります。
今の一般的なネックレシーバーの形になるまで、サックスの歴史の過程で色々な挑戦がなされました。ヴィンテージの中でも高級クラスとされるキングのZEPHYR(ゼファー)では、管体結合の気密性を高めるため、「ダブルソケットネック」というネック側のパイプが2重の構造となっており、本体側のパイプに被さる形で結合します。非常に加工に手間のかかる機構ですが、このネックは1960年代まで採用されていました。このダブルソケットネック機構はキング以外でも、コーンの6Mなどでも見ることができます。
ネックレシーバー部のパイプ嵌合(かんごう)の固定は、円周方向にネジで締め付けておこなう、というのが通常ですが、ウェストコーストジャズの牽引者として知られる、アートペッパーがそのキャリアの初期に使用していたことで有名な、マーチンのCOMMITTEE III 、別名THE MARTINでは、ネック側に付いたタブ上の、パイプ中心側に向いたネジで固定します。
「パイプを締める」のではなく、「回らないよう、抜けないよう固定する」機構です。「結合の精度が高いから、動かないようにだけすれば良い」という発想です。
ネック結合部に隙間が出来たり、ネックソケットとレシーバーが当たって互いに傷つけたりすると、そのサックスは正しく動作しなくなります。ネックレシーバー周りの状態には常に注意を払い、がたつきや引っ掛かりなど、何か不具合を感じたら、迷わずリペアマンに相談することをお勧めします。
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