サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。サックスを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「ネックコルク」です。
ネックコルクとはネックの先端、マウスピースのシャンク(差し込み部分)に挿入する結合部に巻かれたコルクです。コルクは、南ヨーロッパや北アフリカに分布する樹木、コルクガシの樹皮を剥がして加工した、弾力性に富む天然素材の総称です。空気をよく含み、軟らかく、経年変化が少ない為、長期間その弾力を維持します。
そのコルクを2、3mmのシート状にしたものを、ネックの先端に巻き付け、接着剤で固定することで、マウスピースに差し込まれたネック先端を、マウスピース内に密着させ息漏れを防ぐ、という部品です。コルクはサックスの各部分で緩衝材(当たり止め)として使われていますが、ネックコルクは「マウスピースとの気密性」が求められるため、取り付けや調整に技術を要する部品です。
コルク製品には、天然の樹皮を乾燥させた天然コルクによるものと、それを加工した残りを粉砕し圧縮した圧縮コルクで出来たものがあります。ネックコルクには密着性、気密性が求められるため、一般的には圧縮コルクは使用しません。
天然コルクによるシートを必要な幅と長さに切り取り、巻き付く部分が滑らかになるよう斜めにそぎ取ります。ネックに巻く前にシートを木の棒等でしごいて柔らかくし、細いネック先端に巻いても、ひび割れたりしないようにします。
コルクのネックへの接着は、パッドの接着に使うシェラック(熱で溶ける天然接着剤)や、樹脂系の接着剤でおこないます。ネックコルクの接着剤は、マウスピースの振動がネックに伝わる際の媒介になるため、その硬さで吹奏感が変わるとも言われています。
ネックコルクは、「マウスピースとの結合部」ですので、使用するマウスピースとのすり合わせ調整が不可欠です。マウスピースのシャンクの直径はメーカーやモデルによって様々ですし、サックスのネック先端の径も共通ではありません。
またネックは円錐形状でテーパーが付いていますが、マウスピースのシャンク内部は径が均一な円柱です。それらの間をぴったり塞ぎ、かつチューニングのための微妙な抜き差しが出来るよう、ほんの少しの緩さを残しつつ、マウスピースがグラつかず、息も全く漏れない、という高度な調整を、コルク表面を紙やすりで削っておこないます。そして表面にコルクグリスを塗り、抜き差しがよりスムーズになるようにします。
器用なサックス奏者は、ネックコルク交換を自分でやってしまう事もあるようです。ネック先端を全部コルクで覆う場合と、ネック先端のリング部を残してコルクを巻くかで、吹奏感が若干変わると言う奏者もいます。
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