サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。サックスを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「オクターブキー」です。
左手親指で操作するオクターブキー(オクターブレバー)は、二つの「オクターブトーンホール」を開け閉めして、同じ運指でオクターブ上の音が出るようになっています。初期のサックスにはオクターブキーが二つ付いていましたが、近年ではメカの仕掛けでひとつで機能するようになっています。
オクターブトーンホールは誰でも知っているネック上のものに加え、ボディ(2番管)の上部にもあり、このトーンホールには管体内部に向かってパイプが突き出ています。たまにスワブが引っ掛かってしまうのがこのパイプです。
この二つの「穴」は一般的にトーンホール(音孔)として、他のトーンホールとひとくくりにされていますが、正確には「Highレジスター管」と「Lowレジスター管」という名前で、短い管になった穴となっています。英語では「Neck Octave Vent」、「Body Octave Vent」と称され、トーンホールは管体の共振周波数をぴったりと決めるためのものですが、「Vent(通気口)」であるオクターブトーンホールはちょっと違う役割を持っています。
オーバートーンの練習をしているかたは簡単に理解できると思いますが、ある長さの管は、その長さが決める周波数の1倍音に加えて、2倍音、3倍音と、整数倍の周波数にも共振します。2倍音はオクターブ上の音ですね。そして二つのオクターブトーンホールは、「3倍音を出難くして2倍音をきれいに出す」ための穴なのです。
これとは対照的に、サックスの先祖であるクラリネットでは、「レジスターキー」によって3倍音が出る仕組みになっています。クラリネット等の古い木管楽器では、「3倍音を出す」という目的だったレジスター管を、「3倍音を抑制する」という目的でサックスに使い、単純な運指を実現した発明者アドルフ・サックスは、やはり天才だったのではないでしょうか。
ブラスバンドやビッグバンドで演奏しているサックス奏者は、トランペット奏者から、「サックスは良いよね。オクターブキーを押しただけで高い音が出せるんだから」、などと羨ましがられた経験があるかと思います。ハイノートで苦労するトランぺッターには、サックスのオクターブキーは必殺の武器に思えるのでしょう。
でも、実はトランペットにもオクターブキーはあるのです。メーカーや機種によってその有無や数は様々ですが、ロータリートランペットのチューニング管にオクターブキーは付いています。無いモデルもありますし、ウォーターキー(唾抜き)まで使って、オクターブキー4本というモデルもあります。
オクターブキーはオクターブ高い音をより出し易くするためのもので、キーを押しながら音を出すと、該当するオクターブ音が外れ難くなります。高い音をより正確に、外さず吹くことが出来、ppp(ピアニッシモ)などの小さい音量で吹くときに役立ちます。ただし想像通り、運指は恐ろしく複雑になります。サックスのオクターブキーは、やはり魔法のキーかもしれません。
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