ほとんどの地域で梅雨も明け、そろそろ夏本番へ突入というところでしょうか。テレビでは毎日のように、「熱中症にお気を付けください!」という言葉を耳にします。過去に何度もお話ししていますが、今年もサックスの熱中症についてお話しします。
サックスの保存は、高温多湿を避け、ある程度空気の循環する場所に、ケースに入れて保管するのが原則です。しかし人間が熱中症になるような夏の盛り、サックスにとってそんな快適な場所ばかりではないのも現実です。サックスを背負って酷暑の街を歩いたり、車のトランクに入れての移動もあるでしょう。炎天下の野外での演奏機会も少なくありません。
そんななか、サックスの機能維持に関して最も怖いのは、「管体が熱せられることによる、形状の変化」です。直感し難い数値ですが、「20℃の真鍮は、温度が1℃上がるごとに、もとの長さの0.0000175ずつ伸びる」というのが学術的定義です。夏の炎天下の公園の滑り台は、60℃前後にまで熱せられるそうです。
さすがに触れなくなるほどサックスを放置することはないでしょうが、屋外や車のトランク内では、サックスの温度はかなり高くなるでしょう。そしてそのサックスを冷房の効いたスタジオに運び込めば、急激にサックスの温度も下がります。
このように素材金属の加熱/冷却の繰り返しは、確実に管体の変形の原因となります。サックスは金属のパイプですが、トーンホールが沢山開けられており、長手方向の金属密度が場所によって異なり、熱変形の影響を大きく受ける部分と、あまり受けない部分とが出てきます。
この理屈で、サックスの2番管は加熱/冷却を繰り返すことで徐々に曲がって来ます。この歪みが酷くなれば、パッドの密着性が損なわれたり、トーンホールの音響的位置が狂い、音が出難くなったりします。修理や調整がとても難しい故障になりますので、サックスの温度変化には、気を使い過ぎるほど注意しても良いと思います。
サックスの熱中症では、「ピッチ音痴」という症状も現れます。管楽器の発する音は気柱の振動によるもので、楽器の長さによって波長が決まります。しかし楽器中の空気の温度が上がると音速が速くなり、振動数が上がります。つまり音が高くなってしまいます。
楽器が冷えているとき、楽器を吹くにしたがって暖かい呼気によって楽器の中の気温が上がり、音はだんだん高くなります。チューニング前のウォームアップが必要なのは、これが理由です。
しかし真夏の戸外で管楽器を吹くと、室内とは比べ物にならない程、楽器内の空気の温度が上がります。従って夏の野外での音程の取り方は、とても難しいものになります。気温やステージの床の温度によっては、マウスピースを抜き切れないほどピッチが上がる場合もありますので、この問題に対処するのはかなり大変です。
この症状に勝てるのは、アンブシャのコントロールによって、ピッチを大きく変化させられる技術と、柔軟な耳の持ち主だけです。練習、がんばりましょう。
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