マウスピースに関する質問で、一番困るのは「xxのマウスピースの購入を検討していますが、どんなマウスピースですか?」です。ネットのグループSNSでも、同様の質問を多く見つけます。さて、この答え難い質問に、できる限りの丁寧な長い回答をしてみます。
マウスピースの設計上の狙いについては、メーカーが記載している説明が最も信頼すべき内容です。なにせ、そういうマウスピースを作ろうとして作っているわけですから。使用者や所有者の感想は、個人の好みが介入するので、正直なところあまり頼りにすべきではありません。
あるひとが、「ちょっと息が入り難くて、音の輪郭がざらついてる感じがあるから、このマウスピースはジャズ向きかな。」と評したマウスピースが、自分で吹いてみたら、抜けは良いわ、音のエッジはクリアだわ、バリバリのポップス向けじゃね?、なんて事は少なくありません。奏者の息の入れ方、経験したマウスピースの数、アンブシャ、体格、楽器本体の性格等、マウスピースの印象への影響要素は数限りなくあります。
数多くのマウスピースを試している上級者であれば、そのマウスピースの傾向を的確に、かつ客観的に評することが出来るかもしれませんが、そんなマウスピースマニアは多くはいないと思います。そして、それでも結局、特定個人の感想でしかありません。あなたが感じる印象とは、まったく異なる可能性があります。
では、「メーカーが記載しているマウスピースの特徴」をどう解釈すれば良いか、について話しましょう。単刀直入に言えば、あるメーカーの言う「ジャズ向け」の物差しと、別のメーカーが考える「ジャズ向け」の考えは、微妙に異なる、ということを前提に、そのセールスコピーを解釈する必要がある、ということです。
「クラッシック向け」しかり、「フュージョン向け」等もしかりです。時代が変われば音楽のジャンルの内容も変わり、求められるサックスの音質も変わってきます。ベン・ウェブスターのテナーのような、「スモーキーなサブトーン」のサウンドを「ジャズらしい」という人も居れば、ジョシュア・レッドマンのような、「太く、ストレートな音」を「ジャズらしい」という人も居るでしょう。両巨匠ジャズテナーは、生きた時代も違えば、目指した音楽も別物です。ジャズ、と大雑把に括っても、「サックスのサウンド」に関しては大きく異なるわけです。
ジャズの創成期からマウスピースを作っている、オットーリンクやマイヤーの狙うジャズサウンドと、比較的新しいメーカーのセオワニやドレークのそれとは、まったく異なると考えても良いでしょう。
じゃ、「吹いてみなければ何も分からない、という事じゃん。」、となりますが、ま、その通りです(汗)。とはいえ、マウスピースの構造上の「基本傾向」のようなものが無い訳ではありません。
メタルマウスピースは音色がダーク系になりがちで、エボナイトや樹脂系の材質は、クリアな音色傾向があります。ハイバッフル系のマウスピースは息が通り易く、スピード感のあるサウンド傾向を持ち、ローバッフルは息を取られがちですが、吹き込めば太い音が出ます。
そうそう、最後に大事なマウスピース評価の尺度をひとこと。「吹き易いマウスピース」が良いマウスピース、ではありません。「吹いていて気持ち良いマウスピース」が、あなたにとって良いマウスピースです。
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