サックスの製造方法は、意外なほど昔のままの手法を残しています。その理由は数多く考えられますが、決定的な理由は、「そのほうが、良い楽器が出来る」という理由でしょう。近代的な機械加工技術をも凌ぐ、伝承された職人の技が実現しうる部分が沢山あるのでしょう。サックスに使用する、「接着剤」もあまり変化していません。今日はその接着剤について掘り下げてみましょう。
サックスに使う接着剤で、一番最初に頭に浮かぶのが「シェラック」でしょう。ラックとも呼ばれるこの接着剤は、ラックカイガラムシの分泌する成分を精製して得られる、加熱すると粘液状に溶け、常温で硬化する樹脂状の物質で、主にパッドをカップへ固定するために使用されます。
バーナーで溶かしてパッドの裏面に塗布し、パッドをカップ内部に接着します。パッドはトーンホールに対して水平に密着する必要があるので、カップをバーナーで温めてシェラックを柔らかくし、パッドリングという工具を使い傾きを調整します。カップやカップを支えるカップステー(腕)が変形してしまっても、同様の作業でパッドを水平に治すことが出来ます。熱で溶けない接着剤では、このような後調整が出来ず、サックスのコンディションを保つのが難しくなります。
ネックコルクの接着にもシェラックを使用する場合がありますが、ネックコルクの接着剤の硬度が、ネックとマウスピースの間の振動の伝達に大きく影響するため、あえて常温でも弾力性のある、ソニーボンドなど、ゴム系の接着剤を指定するサックス奏者も多いようです。吹奏感ばかりか、サウンドもかなり変わりますので、興味のある方は是非お試しください。
ソニーボンドとは「ソニー製の接着剤」の製品名ではなく、ゴム系の接着剤に対し、昭和世代のリペアマンが使用する俗称です。かつてソニーグループのひとつであった化学系のメーカーが、優秀なゴム系ボンドを発売していたため、このように呼ばれています。
現在では多様なメーカーから、用途別に豊富な種類のゴム系接着剤が発売されており、選択肢が大きく広がっています。ゴム系の接着剤は、サックスでは金属部品間のぶつかりを防ぐ、「緩衝コルク」や「緩衝フェルト」の接着に使用されています。凄く小さな接着面がほとんどなので、耐久性や柔軟性、接着の強度が求められます。
ゴム系接着剤も経年劣化しますので、「あれ、なんかサックスからガチャガチャ音がするなあ」、なんて思ったら、接着剤の劣化による、コルクやフェルトの脱落の可能性が高いです。
サックスの金属部品の接着には「はんだ」が使用されます。はんだは基本的に鉛と錫(すず)の合金ですが、サックスの金属部品の「ロウ付け(低融点合金で金属を接着すること)」には、銀、銅、亜鉛等をベースにした、より強度の高い「銀ロウ」を使う場合もあります。
サックスの部品のロウ付けには、その強度も重要ですが、ある部品をロウ付けしている最中に、近隣の他の部品の接合部が解けて離れてしまう事の無いよう、はんだや銀ロウの融点温度によって、使う場所を配慮する必要があります。サックスの組み立ての順序に応じて、融点温度の違うロウ材を使い分けます。面白いですね。
——————————————————————————————–
⇒『 AIZENより 夏得キャンペーン♪ 返品保証30日+豪華3大特典付き』
⇒『AIZENお客様の声キャンペーン!』
この記事へのコメントはありません。