サックス 演奏

サックス偉人伝:ジョニー・ホッジス

「世界で最高のエンターテイナーでも、またステージ上の大スターでもなかったかもしれないが、涙が出てしまうほどの美しい音色を出すサックス奏者、それがジョニー・ホッジスだった」。デューク・エリントンは1970年5月11日にこの世を去ったサックス奏者、ジョニー・ホッジスをこのように追悼したそうです。
デューク・エリントン楽団の看板リードアルト奏者であり、最大のスターだったジョニー・ホッジス(John Cornelius “Johnny” Hodges)は1906年7月25日、米国マサチューセッツ州のケンブリッジに生まれました。幼少期から独学で、ピアノ、ドラム、ソプラノサックスを習得し、18歳のときにプロのアルトサックス奏者としてニューヨークへ進出しました。
1928年、22歳のときには、運命の居場所とも言えるエリントン楽団に入団しています。ビブラートを強く効かせた、甘く美しいホッジスのアルトの音色は、他の追従を許さない個性と魅力を持ち、たちまちエリントン楽団の看板スターとなりました。エリントン楽団は、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマン、グレン・ミラー、スタン・ケントンらの楽団とともに、一大スウィング・ブームを巻き起こしました。
特に1930年代から第二次世界大戦後にかけ、「A列車で行こう」や「キャラバン」、「スイングしなけりゃ意味ないね」、「イン・ア・センチメンタル・ムード」、「Cジャム・ブルース」、「サテン・ドール」などの、世界的なヒット曲を世に送り出し、それらの多くがジャズの名スタンダード曲となっています。「ジャングル・サウンド」と呼ばれた躍動的で魅力的なバンドサウンドを、23年間もホッジスは支え続けました。

小編成での音楽を追求したいと、1951年にエリントン楽団を退団したホッジスですが、 ドラムスのソニー・グリーアとトロンボーンのローレンス・ブラウンまでをも引き連れて来てしまいました。彼らの新しい門出を応援していたエリントンでしたが、その後他の有名楽団から、多くのミュージシャンを引き抜く等のメンバー補充を重ね、なりふり構わずのバンドの再建を強いられました。
かたやホッジスらはノーグラン・レコードと契約し、アルバム『Castle Rock』を録音します。タイトル・トラックはヒット・シングル曲となり、アルバムはのちにヴァーヴ・レコードより再発されました。数々の名アルバムを発表する中、エリントン自身とも一緒に、『Side by Side(1959)』、『Back to Back(1959)』をレコーディングしています。1960年代初め、ホッジスはエリントン楽団に再加入し、死ぬまでこのバンドのメンバーとして演奏を続けました。

ホッジスがエリントン楽団で吹いていたのは、ブッシャーのビッグBモデルにベルグラーセンのハードラバー・マウスピースです。エリントン楽団のサックスセクションは、ブッシャーの楽器で揃えていたようです。
後年はVITOのSnake Headモデルを使用しています。フランスのルブラン社が米国に設立した会社の、学生向けブランドがVITOですが、該当モデルは非常に独創的なメカニズムや、豪華な装飾が施されています。ホッジスの没後、このサックスはベイシー楽団の重鎮、フランク・ウエスが所有していたそうです。

 

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