「フリージャズ」というジャンルをご存知でしょうか。1950年代末にそれまでのジャズの演奏形態を否定し、何の制約もなく、思うがままに楽器を演奏するという、新しいジャズのジャンルとして登場し、1960年代に隆盛となりました。
サックス奏者では、オーネット・コールマンを筆頭に、アーチー・シェップやアルバート・アイラーなどが著名なフリージャズ・サックス奏者です。
激しくうねるリズムや、「ピキーッ!」といったフリーキー・トーンで絶叫するのが、フリージャズの定番のイメージですが、そのフリージャズからもフリーになってしまっているフリージャズ・サックス奏者がいます。その人の名はアンソニー・ブラクストン。1945年6月4日、米国イリノイ州シカゴ生まれの、現在75歳で現役バリバリの作曲家兼マルチインストウルメンタリストです。
1960年代以降、ブラクストンは100枚以上のアルバムをリリースしています。彼はアルトサックスをメイン楽器としていますが、その他にフルート、アルトフルート、サックスではテナー、バリトン、ベース、コントラバス、ソプラノ、Cメロディを吹きこなし、クラリネットではBb管、Es管、アルトクラ、バスクラ、コントラバスクラまで演奏します。
またピアノの演奏も秀逸です。1990年代から2000年代初頭にかけて、ブラクストンは多くのスタンダードジャズのアルバムに参加していますが、その多くにサックスではなくピアニストとして参加しています。ブラクストンが残した100枚以上のアルバムを年代毎に聴いていけば、彼がフリージャズを越えた「ブラクストンの音楽」をやり続けていることが分かります。
『For Alto (1969)』での、美しいアルトサウンドで紡ぐエモーショナルで自由な演奏。『Birth and Rebirth (1978)』では名ドラマー、マックス・ローチと二人で、互いの魂が共鳴しているが如くの、素晴らしいドライブ感のある演奏を聴かせます。『23 Standards (2003)』に至っては、完全にスタンダードジャズに回帰していますが、そこでもやはりブラクストンの音楽です。
時代とともにブラクストンの音楽は変幻自在に変化していますが、どこを切ってもブラクストンの音楽であり、美しいサウンドを愛する彼のエッセンスは失われません。
ブラクストンはアルトサックスでは、長い間ブリルハートのメタルマウスピース、『レベルエア』を使っていました(今は違うようです)。これは天才マウスピース設計者、アーノルド・ブリルハー ト氏がデザインした最後のメタルマウスピースで、デヴィッド・サンボーンがデュコフに落ち着く前まで使っていたことで有名です。
最近まで生産されていた息の長いモデルで、細身のハイバッフルメタルという、いかにも「フュージョン用」な見かけに反して、バッフルパーツの脱着交換で、ピ ーキーなエッジサウンドからマイルドなサブトーンまで、非常に多様な表情を作ることが出来る秀逸なマウスピースです。
ジョン・コルトレーンが死んだ1967年、あるいはアルバート・アイラーが死んだ1970年で、フリージャズは終わったとも言われています。しかし今だに現役のアンソニー・ブラクストンは、あのころのフリージャズの精神を維持した、「自由な音楽」を発信し続けています。
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