今回の偉人は、著名度で言ったらかなり低いかもしれない「チャーリー・ラウズ」です。彼のファンの方には申し訳ありませんが、マニアレベルのジャズファンでも、テナー奏者、チャーリー・ラウズの名は、「知る人ぞ知る」といった感じではないでしょうか。
そんなチャーリー・ラウズ(Charlie Rouse)は1924年4月6日、アメリカのワシントンD. C.で生まれた、バリバリのハード・バップ・テナー奏者です。1959年から1970年まで伝説のピアニスト、セロニアス・モンクのカルテットの一員として活動し、モンクの音楽を最も理解し、最善の協力者としてモンクを助けたサックス奏者として名を広めました。モンクのバンドを辞めた後も、モンクの曲を好んで演奏し、『モンク・スタイル・ジャズ』を啓蒙し続けました。
ラウズのテナーのサウンドは、当時流行の豪快なテナーサウンドではありません。線の細い、穏やかなサブトーンで複雑なフレーズを、直立不動の姿勢で吹きこなす姿は、まさに「サックスのモンク」とも言われました。
モンクとラウズの熱狂的ファンだった、アメリカの天文学者ジョー・モンターニは、彼の発見した小惑星11091 番に「セロニアス」、小惑星10426 番に「チャーリー・ラウズ」の名をそれぞれ命名したそうです。
23枚ものモンクのアルバムに参加し、名演を残しているラウズですが、彼の残した「ベストアルバム」として必ず取り上げられるのが、名門クラークーボラン・ビッグバンドの重鎮でバリトンサックスの鬼才、サヒブ・シハブと共演した、1988年8月に録音の『Soul Mates(1993)』です。
参加メンバーはチャーリー・ラウズ(ts)、サヒブ・シハブ(bs)、クラウディオ・ロディッティ(tp)、サンティ・デブリアーノ(b)、ビクター・ルイス(ds)、ウォルター・デイヴィス・ジュニア(p)です。64歳のラウズが、超速のアップテンポやスローバーラードで、縦横無尽に軽やかにブローし、それに63歳のシハブのバリトンサックスが、「ブリブリ」と低音のスイング感あふれるフレーズで絡んでいく、というなんとも賛沢なサウンドが実現されたセッションです。ジャズという音楽の楽しさ、複雑さ、寛容さなど、あらゆるエッセンスが凝縮されている、ジャズファンならずとも聴き惚れてしまうアルバムです。
しかしこの録音の3か月後、ラウズは肺がんのために他界しました。そしてサヒブ・シハブもこのアルバムの録音から1年2ケ月後、ウォルター・デイヴィス・ジュニアも、この録音から1年10ケ月後に亡くなっており、この名盤は3人の合同の遺品のようなものになってしまいました。
ラウズの楽器はセルマーのスーパーバランスアクションとMark VIのテナーに、オットーリンク・ニューョークのトーンマスターです。ラウズの軽やかで優しいサブトーンは、この時代の楽器でしか出せない音かもしれません。
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