サックスのマウスピースは、非常に繊細で緻密な工業製品です。丁寧に扱う必要があることはサックス奏者の常識ですが、マウスピースの素材や作り方をちょっと詳しくさらってみましょう。
サックスのマウスピースの材料には、エボナイト、フェノール樹脂(プラスチック)、アクリル、天然木、真録、ステンレススチール、アルミニウム合金など、幅広い種類の材料が使われています。
かつては天然ゴムに硫黄を添加し、加熱することで硬化させる『エボナイト(ハードラバー)』がマウスピースの主たる材料だったため、金属製以外のマウスピースを『ラバーマウスピース』とまとめて称することもありますが、「ラバー」なのはエボナイトのみで、その他の合成樹脂系材料とは異なります。
著名ブランドの非メタルマウスピースには、高品質なエボナイトが使用されている場合が多く、安価なものには、量産し易いプラスチック系の材料が使われているようです。また強度や硬度でエボナイトに匹敵する、アクリルやエポキシ樹脂などが使用されているものもあります。
メタル素材もかつては真録がメインでしたが、ステンレススチール、アルミ合金、チタン合金なども使用されるようになっています。近年では樹脂に金属粉を混合して生成した、ラバーメタル(?)的な素材も登場しています。
どんな素材でも、マウスピースに必要な加工精度、硬度、強度、音響的な振動特性、経年安定性など、複数の条件に渡って優れたものである必要があります。特に硬さと強度は微妙な関係で、硬過ぎると割れ易い、柔らかいと変形する等の、「先端付近の問題」が生じます。
マウスピースは構造的に、「入口と出口のあるパイプの変形」です。ラバー系もメタル系も「型」で成型することが可能ですが、最終仕上がりの精度が求められるため、どんな製法でも手作業による仕上げが必須です。
エボナイト製マウスピースは柔らかい素材を型に注入し、窯で焼いて硬化させ、旋盤で円柱加工、切削機でビーク(くちばし部)加工という手順が一般的です。メタル系マウスピースも鋳型で基本体(ブランクと呼びます)を成型した後、細かく仕上げていきます。
近年では、NCフライス盤(コンピュータ制御切削加工機)で棒材から削り出すなど、精密なマウスピース製造法も実用化しています。また最終仕上げが終わった後、メタル系マウスピースは表面の保護と音響特性向上のためにメッキをします。
メッキの重ね方(普通、金メッキは銀メッキした上に重ねます)やメッキの材料によってサウンドが変化しますので、各メーカーで特徴ある仕上げメッキをしています。
マウスピースはサックスの部品の中で、最もサウンドや吹奏感に影響を与えます。マウスピースの微妙な形状、素材、仕上げ方法でびっくりするほど「サックスの性格」が変わってしまう重要な部品です。自分にとってベストなものを複数個所有して、まさかの場合のバックアップとしているかたも多いようです。
また「代替がきかないから」とヴィンテージマウスピースをあえて避けるプロサックス奏者も大勢います。「サックス本体より、マウスピースのほうが大事!」、は意外と真実だと思います。
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