教則本やサックス教室などでは、サックス演奏の際の指は、「卵を包み込むようにサックスのキーを触る」と教えていることが多いようです。もちろんサックスが「卵」な訳は無く、余計な力を入れず、指を伸ばさず、指の「腹」ではなく先端付近で垂直にキーを押さえるイメージで、といった複数の要件を分かり易くまとめています。では「卵」の真意を詳しく考えてみましょう。
両手の人差し指、中指、薬指は、サックスのパッドカップに着いているキーを直接押さえます。パッドカップは片側のヒンジによって支えられ、反対側のキーを押す、または離すことでトーンホールを開閉させます。パッドを閉じさせるための最善の力は、ヒンジを中心とする円弧に沿った力です。
そしてパッドが閉じている状況を作るためには、キーに対して垂直な力で押さえ続ける事が最も効率的です。もちろんどんなサックス奏者も、演奏中にそんな些細なことを考えてはいませんが、この「理想」とは逆に、「指の腹でヒンジ側に向かって斜めの力でキーを押さえる」といったキー操作を百万回やったなら、パッドカップは湾曲して変形するでしょう。そしてパッドはトーンホールを完全に塞がなくなってしまいます。理想の指の力の方向を頭に入れたうえで、間違った癖をつけないことが重要です。
「硬い指」とは指の付け根の関節(第三関節)のみの動きで指が動くことです。指そのものは棒のように形が変わらず、付け根の筋肉だけでパタパタと動きます。
「柔らかい指」は関節総てが柔らかく動きます。第一、第二、第三関節が複合的に動き、最も素早く指の先端が移動する方法です。柔らかい握りの指は、瞬時に指の先端の角度を変えることも可能にします。「キーを動かす」という動作と、「キーを押さえる」という異なる目的の指の動き、力加減を、瞬時に切り替えることが出来ます。この動きをスローモーションで見るとしたら、パッドカップを閉じさせるときには、ヒンジの円弧に沿って指の先端がキーを引っ張るように動き、パッドが閉じたら指の腹と先端の中間部分で、安定してキーを押さえ続けてトーンホールを完全に密閉します。単調な硬い指では実現できない、複雑な動きと力加減です。
「余計な力」はサックスの運指にとって諸悪の根源です。強すぎる「押さえ」はキーメカニズムを歪めて故障の原因を作ります。また指の強張り(こわばり)はその指の動きを抑制するだけでなく、他の指の動きをも阻害します。指の運動連携についての詳細はネットに情報が沢山ありますので参照してください。
いやあ、今回は難しい説明になってしまいました。しかしこれらの内容を覚える必要もなければ、サックスを実際に手に取って試す必要もあまり無いと思います。正しい指使いとその理由、悪い指使いとその悪影響を「知って」さえいれば充分です。その知識が良い運指の自信になり、悪い癖の抑制になるはずです。今回はそんな「おまじない」でした。
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