キューバ出身のサックスとクラリネットの名手、パキート・デリベラは1948年6月4日、キューバのハバナに生まれました。5歳のとき、クラッシックサックス奏者であった父親にサックスを習い始めました。12歳でハバナ音楽院に入学し、そこでサックスとクラリネットを学びます。17歳でキューバ国立交響楽団のソリストに抜擢され、後に同楽団の指揮者となります。
ハバナ音楽院で出会ったピアニスト、チューチョ・バルデースとともに、ジャズ、ロック、クラシックにキューバの音楽を融合させた伝説のグループ『イラケレ(Irakere)』 を1973年に設立します。後に偉大なキューバン・バンドとして世界に知られることになるイラケレは、アメリカの対キューバ通商停止政策により、1977年になるまで世界の音楽ファンにその存在が知られることがありませんでした。
主要なメンバーは、リーダーでピアノのチューチョ・バルデース、天才トランペッターのアルトゥーロ・サンドバル、そしてサックス&クラリネットのパキート・デリベラで、1977年の通商規制解除の後敢行したアメリカツアーで熱狂的な人気を博し、アメリカのコロンビア・レコードと専属契約することになります。
ジャズをメインに、多岐に渡る音楽のエッセンスを複雑にアレンジし、強烈なサルサのリズムと合わせてみせるバンドのサウンドに、世界中が驚愕しました。
1980年初頭、スペインでのツアー中に、パキートはアメリカ大使館に駆け込み、妻と子供を残して単身亡命します。アメリカへの亡命以降、パキートはクラシックやジャズ、ラテン等、多岐に渡る音楽分野で活躍します。
ナショナル交響楽団、ロンドン交響楽団、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、フロリダフィルハーモニー管弦楽団、ブロンクスアーツアンサンブル、プエルトリコ交響楽団ら名門オーケストラとの共演、ディジー・ガレスピー・ビッグバンドでの演奏、自己のバンドでの演奏と、まさに伝説のサックス奏者となっていきます。なんとクラッシックとラテンジャズの両方の分野で、14回ものグラミー賞受賞を成し遂げています。
「和音が出せない楽器なのに、彼の吹くメロディーの後ろにはオーケストラやパーカッションが聞こえる。ラテンはもちろん、スイング、そしてモーツァルトまでジャンルの壁を全く感じさせないで自由自在に飛び回る…」、と名ピアニスト、小曽根真氏は評しています。
パキートのクラリネットはルイス・ロッシのオーダーメイド・モデルです。クラリネットに多い「グラナディラ材」製ではなく「ローズウッド材」を使用した、温かい音が特徴の美しいオレンジ色のクラリネットです。
最近使用しているアルトサックスは、ヤマハYAS-875のブラックラッカー仕様。黒い管体に金色のシャフト&キーが映えるゴージャスなルックスです。
アルトのマウスピースは、ブランフォード・マルサリスも愛用していることで有名な、ニューヨークのマイク・カスタム・ウッドウィンド製のカスタム・マウスピースです。若い頃使っていたセルマージャズメタルFスラントを、ハードラバー材で再現してもらったという特注マウスピースだそうです。
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