サックスばかりでなく、ベースやキーボード、シーケンサーのプログラミングにまで才能を発揮する、超天才フュージョン・サックス奏者、ジェラルド・アルブライト(Gerald Albright)は、1957年アメリカのロサンゼルスの生まれです。今ではフュージョン・スムースジャズ界を代表するサックス奏者ですが、ジェラルドのプロデビューはサックス兼ベース奏者としてでした。
高校生の頃からサックスを演奏していたジェラルドですが、大学時代にスラップベース奏法の始祖、ルイス・ジョンソンのライブに感動し、ベースに転向します。大学卒業からまもなくして、ジャズピアニスト兼R&Bシンガーのパトリース・ラッシェンのバンドに加入し、サックス兼ベーシストとしてツアーに参加しています。
ジェラルドはしばらくサックスとベースの両方を演奏していましたが、80年代には売れっ子のフュージョン・サックス奏者になり、アニタ・ベイカー、レイ・パーカー・ジュニア、テンプテーションズ、モーリス・ホワイト、ホイットニー・ヒューストンら大物ミュージシャンと共演しています。
1987年に初のリーダーアルバム 『Just Between Us』をリリースし、それが大ヒット。以降ジェラルドはスムーズジャズのフォーマットを確立し、数多くのヒットアルバムをコンスタントに発表して人気を博しました。リーダーアルバムの 『The Envelope (2010)』と『Slam Dunk (2014)』、ギタリストのノーマン・ブラウンとの共作『24/7(2012)』、そしてまさにサックス・オールスターズという顔ぶれの、デイブ・コーズ、ミンディ・エイベア、リチャ ード・エリオット、そしてジェラルド・アルブライトの4人が集まった、ゴージャスな企画アルバム『Dave Koz And Friends:Summer Horns(2013)』の4枚のアルバムは、すべてグラミー賞ノミネートの超ヒットアルバムです。
ジェラルド・アルブライトと言えば、キャノンボール社の「ジェラルド・アルブライト・シグネイチャーモデル」を思い出すサックス奏者は少なくないでしょう。ブラックニッケルの黒いベルにシルバープレートのボディという個性的なルックスと、どこまでも明るく力強いサウンドで、キャノンボールサックスを代表する逸品です。
キャノンボール社は1996年に現社長であるテヴィス&シェリル・ロウカット夫妻により設立された管楽器ブランドで、アメリカ・ユタ州と台湾の自社工場で、サックスをはじめとする各種管楽器を製造しています。社員はほとんどミュージシャンで、夫妻も二人とも優秀なサックス奏者で、セルマーのヴィンテージサックス、Mark VIを高く評価しているそうです。
そしてテヴィス社長日く、「Mark VIを超える、重くて大きいサックスを作ってみたかったんだ。(プロモーションで来日したときのコメント)」という事らしいので、キャノンボールサックスとジェラルド・アルブライトとの出会いは、サックス界の発展に寄与する運命的な出会いだったのかもしれません。
すべてのサックスの原型は「Mark VI」である、と言われてしまうほど、現代のサックスでもどこかMark VIっぽいところを持ったサックスが数多く存在します。そんな中でキャノンボールのサックスとジェラルド・アルブライトの音楽は、新しいサックスのサウンドのひとつを示しているのかもしれません。
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