「怪物系」ジャズテナー奏者の総帥、エディ・ロックジョウ・デイヴィスは1922年ニューョーク市に生まれました。スウィング、バップ、ハードバップ、ラテンジャズ、ソウルジャズ等多岐に渡るジャンルで卓越した演奏を残した、唯一無二の個性的なテナーサックス奏者です。
幼少期やプロデビュー前の資料はあまり多くありませんが、1940年代前半にはリズム&ブルースのジャンルでプロ活動を始めています。
1946年にはファッツ・ナバロ(Tp)、アル・ヘイグ(Pf)、ヒューイ・ロング(Gt)らとともに、自己のバンド、『エディ・デイビスとビバッパーズ』として活動しています。
凄まじい音、凄まじい気迫、凄まじいフレーズで聴衆を圧倒するロックジョウは、あのカウントベイシー楽団において、バンドの顔となるフィーチャーソロイストとして絶大な人気を博しました。重厚なバンドサウンドの中から、ロックジョウの爆音テナーの超速ソロが飛び出してくると、誰もが歓声をあげられずにはいられません。
豪快なテナ ーでファンを魅了したロックジョウですが、1986年、血液の癌、ホジキンリンパ腫により64歳で亡くなりました。
独特の表情でマウスピースをくわえ、濁った、太い音色でブロウする、鬼神のような風体の大男、エディ・ロックジョウ・デイヴィスの「ロックジョウ」はもちろんあだ名です。
岩の顎(ロックジョウ)というあだ名に加え、鮫のような凶暴な顔つきでテナーサックスに噛みつき、ブロウしまくるところから、「ジョーズ」というあだ名もありました。
ロックジョウは見た目(?)もサウンドも典型的なテキサステナースタイルで、豪快で粗雑、音もゴリ押し的なタフ・サックスと呼ばれました。少ない音種とフレーズ、驚異的に速いタンギングで超高速の曲を吹ききってしまうパワーは、他のどんなサックス奏者にも見られません。
1960年から1962年にかけて、もう一人の怪物系テナー奏者、リトルジャイアント、ジョニー・グリフィンとともに、「タフ・テナーズ(頑強なテナー)」と呼ばれるツインテナーのクインテットで活動しました。デカくて鬼のような怪物と、小さくて笑顔のかわいい怪物が、「轟音」テナー サウンドで、超絶スピードの曲をバトルするのは爽快そのものです。「これがジャズテナーの王道だぜ」と言わんばかりの二人の演奏は一聴の価値があります。
1960年代半ばから、ロックジョウとグリフィンは、主にヨーロッパのジャズシーンで共に活動し、ケニー・クラークとフランシー・ボランが結成した、クラーク=ボラン・ビッグバンド等で演奏しました。
ロックジョウの楽器はセルマーのMark VIにリンクのメタルという王道のセッティングですが、その独特なアンブシャは有名です。リードの先端がマウスピースから数ミリは飛び出しており、リガチャーの位置もかなり先端側。それをすごく浅めに、下側から唖えています。
たぶん、怪物級自己流のサックス奏法なのでしょうが、到底常人と思えないタンギングの速さや、音の大きさ、太さ、ジェットコースター のように駆け上がり、駆け下がるフレーズを聴かされれば、「うん、奏法なんてどうでもいいんだな」と思わざるを得なくなってしまいます。
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