ネックの交換や改造が、サックスのサウンドや吹奏感に顕著な変化をもたらすということは、今やサックス奏者の間で常識となっています。
多くのサックスメーカーがオプションの交換用ネックを用意していますし、アクセサリーメーカーも多様な「単体売り」ネックを開発・販売しています。ネックでのサウンド改造のための環境や、考えられる効果や傾向について、今一度整理してみたいと思います。
楽器メーカーの最大手ヤマハは、サックスネックのオプションの設定に非常に熱心です。
アルトサックス用には内径の設計の違いによる4種類のネックモデル、AC1、AE1、AV1、AG1を、テナー用には TC1、TV1、TE1の3モデルを用意しています。各々がそれぞれの特徴を持っており、加えてこれらのモデルごとに、素材と仕上げ違いの6種(ゴールドラッカー、金メッキ、銀メッキ、アンラッカー、ブラックラッカー、スターリングシルバー)のバリエーションがあります。
同様にYANAGISAWAやセルマーも、素材違い、設計違い、仕上げ違いのネックを広い選択肢で用意しています。
これらそれぞれにサウンドや吹奏感の特徴説明が添えられていますが、これらの説明はあくまで総合的な傾向で、サウンドや吹奏感に関する印象は吹き手の人それぞれです。スターリングシルバー製のネックなどは、吹く人によって全く違う傾向のサウンドと吹奏感になったりします。
こんな色々なバリエーションがあり、「それぞれこのような効果が期待できる」程度に考え、自分で吹いてみて変化を納得するのが良いでしょう。
ネックの金属素材のバリエーションの他、フォレストーン社のカーボンファイバー製のネックや、パラスコス社の天然木、パリサンダー(インディアン・ローズウッド:本紫檀)を使ったネックもあります。
カーボン製は鳴りの反応速度が速く、かつ息の通りもスムースです。パラスコスの木製ネックは、木製ならではの暖かで太く、柔らかな響きが特徴です。
テナー用ネックでたまに見かける、「ネックステー(補強支柱)」も音質に影響を与えます。一般的には、曲がり易いスターリングシルバー製のネック強度を増すために付けられますが、「音が太くなり、輪郭が締まる」と一般材質のネックに、ステーやひれ状の金属を付けるサックス奏者もいるようです。
大手メーカーのオプションのネックは、そのブランドの対象機種向けにテノン(継ぎ手部)の直径が適合するよう作られていますが、単独で販売されているネックのテノン径は、必ずしもすべてのサックスにぴったり合致するわけではありません。
ほとんどのリペアマンは、テノンの直径を指定のサックスのネックレシーバーに合うように調整する、器具と技術を持っていますが、試奏の段階でそのような加工はできませんのでご注意を。
また再メッキや追加彫刻などの「改造」は信頼できる専門家に依頼したほうが無難です。メッキは数ミクロンの厚さの違いで大きくサウンドが変わりますし、追加彫刻は、絵柄の密度や面積で倍音の構成が変わります。
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