サックスのサウンド改良アクセサリーの種類は、数ある管楽器の中でも多分一番多いのではないかと思われます。効果が万人に周知されている「定番アクセサリー」もあれば、「うーん、気のせいじゃない?」 なんてものまで、多種多様なものが溢れています。
しかし昔は、サックスといえども、そんなにアクセサリーの種類は多くはありませんでした。いつからサックスには、そんなにたくさんのアクセサリーが付くようになったのでしょう。
正確な記録もありませんし、どうなったから始まりとの定義もありませんが、私の私見での「サックスのアクセサリーブームの火付け役」は、ウッドストーン(以下WS)製の「金属製サムレスト」ではないかと思っています。
私が自分のMark VIテナー用に、WSのメタルサムレストとサムフックを揃えて買ったのが2002年頃だったと記憶しています。その頃には金属製のサムレスト、サムフックに加え、多様な金属材質のネックスクリューも、いくつかのメーカーが発売していましたが、WSの金属サムレストは、その効果の高さから、多くのサックス奏者の間で評判になっていました。
特許検索サイトで調べると、特許番号3908322 の特許として、『発明の名称:サクソフォーンのサム・レスト(原典の用語「サム・レスト」を引用)、出願日:平成9年3月26日、登録日:平成19年1月26日(2007.1.26)』とあり、詳細な図面や特許の解説が添付されています。出願が1997年ですので、その年か翌年には発売されていたのでしょう(あくまでも憶測です。異論がある方もいらっしゃるでしょう)。
この特許の肝は、サムレストの部品のサックス本体への接触部分を、極力少なくしてあるところです。極小の六角ねじで四隅から結合部を「点」で挟み込み、サックス本体への接触面積を少なくしています。特許の説明には、「本実施形態によるサム・レストは、従来の接着剤による固定とは異なり、ドライバを用いてネジ部材で台座に固定するため、台座との接点が小さく、共鳴効果が向上する。」とあります。
WS金属サムレストは、今でも人気のアクセサリーパーツです。こんなにも長く愛されるのは銘品である証拠でしよう。しかし、その効果の高さ、製品としての完成度だけでこの製品を「銘品」と呼んだのではありません。
この製品は、まさにサックスのサウンド創りの歴史に、革命的な変化を与えました。もちろんそれまでも、金属製のサムレストとサムフックは多くのヴィンテージサックスに使用されています。しかしそれらのほとんどは管体にロウ付けされており、サックス全体の振動や響きを考慮して、交換したり調整出来るものではありませんでした。しかしこの金属サムレスト以降、多くのメーカーが交換用サムレストやサムフックを開発し、多様なパーツが発売されるようになりました。
またサックス全体の振動や共鳴特性を改善するため、沢山の種類のサックスアクセサリーが開発されてきました。銀やチタン等の金属のネックスクリュー、接合部の特殊ネジ、接合部に塗布する金属粒入りオイル、特殊材質の交換ネック、 等々。そんなサックスアクセサリー時代の先鞭を作ったのが、このWS製金属サムレストではないかと思っています。
——————————————————————————————–
この記事へのコメントはありません。