最近のサックス奏者の間では、ネックの材質や表面処理の方法の違いが、サックス全体のサウンドや吹奏感に大きく影響することが、もはや常識として知られています。マニアなサックス奏者たちは、自前のネックの塗装をし直したり、金属メッキを施したりして、自分の楽器の改造をしています。今日はリラッカーやリプレートの話しをしましょう。
「リ」というのは「再」という意味ですので、リラッカーは「ラッカーの再塗装」、リプレートは「再メッキ加工」のことです。とはいえ、ラッカーの上にラッカーをかけたり、メッキの上にメッキを施すわけではありません。元にあるものを修正することを、リラッカー、リプレートと呼んでいます。ネック改造マニアのサックス奏者の皆さんは、主にリプレートでネックの性格を変えるようです。ネックの元のラッカーを剥がし、銀や金、ニッケル等の金属によるメッキを施すことで、サックス全体の音質や、吹奏感が大きく変わります。銀メッキはクリアで柔らかな音色になり、抵抗感が増え、パワーが入れられるようになると言われています。金メッキは通常銀メッキを施した上に薄く金メッキをかけます。見た目に非常に美しく豪華です。サウンドの方向は、金属の密度が高いため鮮やかで華やか、パワーを入れても音が割れにくい等の性質があります。ピンクゴールドは、金に銅などを少量加えた合金で、銅が含まれているために金メッキよりやや柔らかめの音色になります。ニッケルメッキは音が重く、こもった暗い輝きが特徴です。ニッケルにスズを混ぜると、黒みがかったガンメタリックになります。これがブラックニッケルプレートですが、ブラックラッカーと見分けが付きにくい場合もあります。プレート(メッキ)は金属の純度や数ミクロンの厚さの違いで、サウンドや吹奏感に対する影響が大きく変わります。リプレー トは剥離剤でオリジナルのラッカー塗膜を溶解し、念入りな洗浄と表面磨きの後におこなわれます。ある程度の規模の装置が必要なので、ネックのリプレートをリペアエ房に依頼しても、大半は専門のメッキ業者に外注されます。
リラッカーをサックスのネックに施すケースは多くないようです。一番多い例は、ヴィンテージサックスのリラッカー個体でしょう。なんらかの理由でオリジナルのラッカーが極端に劣化、損傷し、サックスの音色や見栄えを維持するために、サックス全体に「ラッカーをかけ直した」例です。状態はミント(キレイで新品のような見た目)でも、製造時のままのオリジナル個体でないため、ヴィンテージ市場では評価は低いようです。でも上手にリラッカーされたヴィンテージサックスの中には、極上のサウンドを維持しているものも無いわけではありません。リラッカーは劣化した塗装被膜やさび等を完全に落とし、バフで磨き上げたうえでラッカーを再塗装するので、鳴りが良くなる場合も少なくありません。ネックのリプレートだけでなく、ネックのリラッカーも「有り」のような気がしますが、どうでしょ?
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