サックス奏者にとってマウスピースは「自分のサウンドのための重要な音源」です。そこに取り付けるリードも、「気難しい最重要部品」です。そしてその両者をつなぐリガチャーは...。うーん、何でしょう。最近では特色ある形状のリガチャーも多く出回り、リガチャーがサックスのサウンドや吹奏感に与える影響の大きさは、周知の事実となっています。場合によってはマウスピースより高価なリガチャーもあります。そんな重要なリガチャーですが、お手入れや掃除についての解説はあまり見かけません。リガチャーのお手入れについて考えてみましょう。
金属ベルト式、樹脂ベルト式、紐式、順締めネジ、逆締めネジ、二本ネジ、一本ネジ、等々、本当に沢山の形状、材質のあるリガチャーですが、お手入れの基本を押さえるために、金属ベルト式二本ネジ順締めリガチャー、という「超一般的」なリガチャーを素材に、お手入れの基本ルールを考えていくことにしますが、お手入れの基本的な考え方はどんなタイプのリガチャーにも共通です。
さてこのリガチャー、他の小物と一緒に袋で保管しているため、形がひしゃげています。無理な力が加わって少しねじれてもいます。ヴィンテージなので、ベルトの外側も内側も錆びだらけです。締めネジは、二本のネジの長さとツマミ部分の形状が異なっています。ヴィンテージなので材質が良いせいか、良く鳴るリガチャーです。…ってだめですよ!リガチャーはリードをしっかりと、かつ均一な力でマウスピースに固定し、そしてマウスピースの振動に倍音を付加するという大切な機能を持っています。ゆがんで、錆びて、変なネジが使われたら、そのリガチャーの能力は全く発揮出来ません。
まずは金属ベルトの形状を整えましょう。形をきれいな円に整えて、マウスピースのカーブにぴったりと沿うようにするのが重要です。締め付けベルトは両端をネジで締め込むことで引っ張られ、その力でリードをマウスピースのテーブルに密着・固定させます。形が歪んでいると、ベルトからの力が均一に伝わらず、リードを固定する力にムラが生じます。この力のムラはリードの振動に悪影響を与えます。全体の錆も掃除しましょう。リガチャーはラッカー仕上げや銀メッキが多く、手入れが悪いと錆が全体にこびり付きます。見た目が悪い程度なら0Kですが、ベルトの内側がザラザラ・ボコボコになる程のサビの場合は、目の細かいヤスリ等で磨きましよう。ベルトの内側の摩擦が多いと、ベルトの形状が歪んでいるのと同様に、リードを固定する力にムラが生じます。ベルトの外側はあまり気にする必要はありません。最後に、ネジは2本同じものに交換しましょう。リガチャーの締めネジは、リガチャーを均一に引っ張るための部品であると同時に、倍音を付加するための重要な要素です。良質な金属製の、同じネジを使うのが理想です。リガチャーの締めネジの頭は、特殊な「変則蝶ボルト」と呼ばれるものなので、あまり一般的ではありません。リガチャーのジャンクの山から探し出すか、場合によってはリペアマンに作ってもらいましよう。でも、これだけ面倒を見ても、「気に入るサウンドになるか」は全くの別問題です。
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