「ファンク」という音楽ジャンルがあります。アフリカ系アメリカ人をルーツとするブラックミュージックのジャンルのひとつで、16ビートのリズムと反復されるフレーズや、曲をリードするベース、歯切れよくリズムを刻むギターなどが特徴です。ファンクは1960年代に、ジェームズ・ブラウンと彼のバンド(後のJBズ)によってその原型が形成されました。そして今でも、「ノリノリでカッコ良い音楽」と言えば「ファンク」です。そしてファンクの世界には、“ファンキー・サックスの王者”、“ファンクミュ ージックの代名詞”、メイシオ・パーカーが今も君臨しています。
1943年、アメリカはノースカロライナに生まれたメイシオ・パーカーは、レイ・チャールズを最大のアイドルとして育ち、12歳の頃にはサックスを手にしていました。1964年にジェームズ・ブラウンのバック・バンド、JBズに、弟であるドラマーのメルヴィン・パーカーとともに参加します。しかし1970 年、ギャラの支払いのトラブルでジェームズ・ブラウンのバンドを解雇されてしまいます。すぐに自身のバンド、「メイシオ&オール・キングス・メン」を結成しましたが、なかなか思うように売れず、失意のままバンドは解散。なんと音楽活動の休止にまでに至りましたが、幸運にも1973年にジェームズ・ブラウンと和解して彼のバック・メンバーに復活し、再び大活躍することになりました。後に1975年人気ファンクバンド、Pファンクへも参加しています。1990年代に入ると、メイシオはソロ活動を中心にし始めました。最初に発表したアルバム『Roots Revisited/ルーツ・リヴィジテッド』(1990年)は、驚くことにファンクのリズムを抑えて、スウィングとブルースを大胆に取り入れた本格的なジャズ・アルバムとなっています。新しいメイシオの魅力を打ち出したこのアルバムは、ビルボードのコンテンポラリー・ジャズ・チャートで10週連続1位となり、メイシオの音楽をジャズ・ファンに向けてもアピールすることとなりました。メイシオ75歳の昨年2018年には、レイ・チャールズゆかりのコーラス“レイレッツ”や、17年間レイ・チャールズのバンドに在籍したスティーヴ・ジグムンドらと来日し、「メイシオ・パーカー & ヒズ・ビッグ・バンド“ディス・イズ・レイ・チャールズ”featuringザ・レイレッツ&スティーヴ・シグムンド」と銘打った公演をおこない、圧倒的でソウルフルな音楽世界を披露しました。
メイシオの楽器はセルマーマークVIのゴールドプレートのアルトサックスに、ブリルハート・エボリンのマウスピース3番。リードはヴァンドレンJavaの3-1/2を使用しています。アルトサックスだけでなく、メイシオはヴォーカルとフルートも「超ファンキー」です。メイシオのプレイは多数の客演でも聴くことが出来ます。プリンス、キース・リチャーズ、ブライアン・フェリー、キャンディ・ダルファー、 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、アーニー・ディフランコ、デ・ラ・ソウル、カラー・ミー・バッド、坂本龍一など、ジャンルも多岐に渡っています。ここまで多くのミュージシャンに愛されているサックスプレイヤーは、他にはいないでしょう。
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