「おいおい、エディ・ダニエルズならサックスの偉人じゃなくて、クラリネットの神様だろ！」と言う方が少なくないと思います。確かにエディ・ダニエルズと言えば、ベニー・グッドマン、バディ・デフランコに並ぶジャズクラリネット界の超巨匠です。でもサックス界でも凄い人なんです。…というエディ・ダニエルズは、1941年、ニューョーク生まれのマルチリードプレーヤーです。ジャズとクラッシックの両方のジャンルで活躍する技巧派のクラリネット・プレイヤーとして知られていますが、アルトおよびテナーサックス、フルートも素晴らしい演奏技術を持っています。ジャズに興味を持つようになり、初めて触れた楽器はアルトサックスで、15歳でニューポート・ジャズフエスティバルに出演しています。同時にエディは13歳でクラリネットを始めており、進学したジュリアード音楽院ではクラリネットを学び、修士号を取得しています。1966年から6年間、サド・ジョーンズーメル・ルイス・オーケストラにテナーサックスで参加し、名盤、『Consummation』や『Live At The Village Vanguard』の録音にも参加しています。またフレディ・ハバード、ソニー・ロリンズ、リチャード・デイヴィスといった大物ジャズ・ミュージシャン達とも共演しています。サドメル楽団の頃から、クラリネットとフルートに持ち替えた演奏も多く、その技術は高く評価されていました。1980年代は伝説のGRPオールスターズで活動しますが、この頃はクラリネットに専念しており、サックスパートの座はアーニー・ワッツとボブ・ミンツァーに譲っています。エディの最優先の目標は、できるだけ多くの人に音楽を届け、ジャズとクラシック音楽の両方の聴衆を拡大すると同時に、それらを隔てる壁を壊すことだそうです。彼の中では、モーツァルトの音楽はチャーリー・パーカーの音楽と同じくらい魅力的であり、両方をフィーチャーしたコンサートは多くの観衆の支持を受けています。

　エディのテナーの魅力は1968年に日本でリリースされた『This is New』で知ることが出来ます。日野暗正(tp)、菊地雅章(pf)、日野元彦(ds)、稲葉国光(b）という豪華なメンバーと、サド・ジョーンズ＝メル・ルイス・オーケストラの一員として来日した、エディ・ダニエルズが繰り広げる熱いセッションとなっています。エディのテナーは、コルトレーンを少し聴き易くしたものと言っていいかもしれません。同アルバムに収録されたコルトレーンの名作「Giant Steps」では、元祖を凌ぐシーツオブサウンド（音の洪水）を披露していますが、そのサウンドはコルトレーンに比べて優しく、マイルドになっています。
　エディ・ダニエルズというと、真っ先にリガチャーの名前として思い浮かべる人も多いと思います。ロブナー社が彼と開発した、樹脂ベルト式一本ネジ逆締めリガチャーのロングセラー商品です。現在はヴェルサ（Versa) と名称変更して販売されています。クラ用、サックス用ともに、癖のないコントロール性の高いリガチャーとして人気です。エディ・ダニエルズは、あらゆる方面で大活躍しているのに何故か矢面に立ちません。目立つのが嫌いな「超人」なのでしょうか。

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