高価なヴィンテージ・サックスのカタログを、ヨダレを垂らしながら見ていると(笑)、何故か妙に価格が安いものが混じっていませんか?モデルや年代、痛みの程度が同じでも、15~20%低い値付けがされているのが「リラッカー」のヴィンテージ・サックスです。リラッカーとはオリジナルのラッカー塗装がそのままのものに対して、一旦オリジナルの塗装を剥がし、再度ラッカーをかけ直したものをそう呼びます。しかし、ここまで価格が安く設定されていると言うことは、「リラッカー」のヴィンテージ・サックスには何か難点があるのでしょうか?今日はそのへんを追及してみましょう。
まず結論を言ってしまいます。リラッカーのヴィンテージ・サックスが、オリジナルラッカーのものに較べて、品質が劣るということはありません。何十年も前に製作されたヴィンテージ・サックスを欲しがる人の中に、「当時のオリジナル性」にこだわる人が多いので、リラッカーのものが比較的安価で流通しているだけです。オリジナルラッカーのものより、渋く、枯れたサウンドを持った「リラッカー」のサックスを沢山吹いた経験があります。要は市場での人気の問題です。しかし、多くのヴィンテージ・サックスがその個性を発揮している要因である、その独特のヴィンテージ・サウンドは、ラッカーの状態に関係していることは事実です。不動の人気を有するセルマーのマークVIでも、特に人気の高いアメリカセルマーのモデルは、フランスセルマーのものとラッカーの質とかけ方が異なります。また長期の使用で、自然にラッカーが剥げてきた状態のモデルは、独特の枯れたサウンドを持っています。またデッドストックとして長期に倉庫で保管されてきたような、「新品のぴかぴかのヴィンテージ・サックス」は、その製造年に対して、「うん?」、と思うようなサウンドである場合が多いのも事実でしょう。
もう「定価」の価値がすっ飛んでしまったヴィンテージ・サックスの市場では、需要と供給、人気と差し値、希少度、そのような要素で価格が決定されます。リラッカーは決して「難点」ではありません。吹いてみて、もし気に入ったサウンドが出すことができたなら、とってもお得な買い物が出来るのではないでしょうか。
*写真は全てflickrから掲載しています。
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