いくつかのメーカーでは、ジャズ用と称してハイF♯キーが着いていないモデルを、ラインナップに入れている場合があります。またヴィンテージ・サックスの中では、F♯キーレス仕様のほうが、有るものより高価だったりします。
ということは、ハイF♯キーは「良くない」ものなのでしょうか?このへんについて誤解している方も多いようです。今日はハイF♯キーの存在についてお話します。
ハイF♯キーは最高音域のF♯を出すためのキーです。このキーのおかげで簡単にハイF♯を出すことが出来ますし、トリル操作も可能です。なら、どうして、「無くても良い」、もしくは「無い方が良い」とまで言われてしまうのでしょうか?
答えは簡単です。ハイE、ハイF、ハイF♯は通常運指ではパームキーの組み合わせで出しますが、左手の人差し指、中指、薬指の三本の操作で出せる「替え指」があります。こちらの替え指のほうが、両手を使う通常運指に比べて簡単なため、替え指のほうを多用するプレーヤーが多いのです。
特にジャズのジャンルでは、この音域での細かいフレーズの出番は少ないので、いきおいジャズサックスの間では替え指のほうが多用されます。しかしもちろん音程の良さは通常運指のほうに軍配が上がりますし、ちょっとでも細かいフレーズが出てくれば、通常運指で操作するのがベストです。
そもそもサックスの登場時点ではハイF♯キーは有りませんでした。歴史の中でその必要性と、実現する技術が熟成し、プレーヤーのニーズに応えるために「新しく発明された」キーなのです。有る方が良いに決まっています。ではどうして、「ハイF♯キーレス・モデル」が求められるのでしょう。
ハイF♯のトーンホールはサックス本体のネック側、ジョイントのすぐそばに開いています。しかも結構大きい穴です。ですので、カップもそれなりの大きさです。そしてハイF♯キーは右手薬指で操作するので、そこから長いシャフトが出ています。
サックスは口元に近いほど、各種の条件がサウンドに影響する度合いが大きいと言われていますので、ネック近くのハイF♯トーンホールがサウンドに悪影響を与えているのでは、と考える方もいらっしゃるでしょう。またこのハイF♯キーのメカニズムを外してしまえば、サックスから数百グラムの部品を外すことができます。
これもサウンドに多少なりとも影響するでしょう。「ハイF♯キーレス信奉者」の方々はこの辺の理由によるもののようです。もちろんハイF♯キーの着いたサックスは、その状態で最高のサウンドが出るよう調整されています。「ハイF♯キーが無いモデルは音が良い」は、単なるサウンドの好みの問題です。
*写真は全てflickrから掲載しています。
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