サックスという楽器には、多種多様な「音質改善アクセサリー」が存在します。特殊な形状や材質のリガチャーでリードを固定したり、ネックに金属を巻き付けたり、ネック固定ネジに色々な素材の色々な形状を使ったり、ライヤーホール(小型譜面台取り付け用の穴)に何かの金属を差し込んだり、サムレストやサムフックの材質を変更したり、ベルステー(ベルと本体の接続金具)に特殊な材質のネジを使ったり、U字管の内部に重りを付けたり、… 等々。まあ、星の数ほどのアクセサリーがお店に置いてあります。これらの「音質改善アクセサリー」達は、実際どのように働いているのでしょうか。
高名な管楽器設計者、竹内明彦氏(故人)の著書にこういう記述があります。「サックスのオクターブキーは、第二倍音の振動モードを発音させるために、基本音や第三倍音の振動モードの成立を阻害している」、と。つまりオクターブ上の音を出すために、それ以外の「出そうな音」を抑制する役割がオクタ ーブキーの機能ということです。そしてほとんどの管楽器の機構はこれと同様に、「出したい音を出すために、出したくない音を出難くする」メカニズムが楽器の基本機構と考えることが出来るそうです。また竹内氏はこのような趣旨のコメントもしています。「管楽器の理想的な音響モデルは、管の肉厚も素材も均一なこととして考える。しかし実際の楽器は、その製造上の理由や構造の問題で、管体の裏側から見た肉厚はとても均一と言える代物ではない。しかしこの不均一性、もしくは特定の場所での肉厚の違いが、 その楽器の特徴あるサウンドの根源となっている場合も少なからずある」、と。管楽器は音叉のような単―周波数を発しているわけではありません。各種の倍音が複雑に混ざり合って、その楽器独特のサウンドを形成しています。サックスのトーンホールや、ポストの溶接部分、締め金、取り付けネジ等、すべての部品はそのサックスのサウンドに対し、倍音成分の足し算引き算をおこなっています。そしてそれを強調したり、抑制したりするのが「音質改善アクセサリー」と言えると思います。
単純に分類すれば、音質改善アクセサリーには、響きを抑制する「おもり型」と共鳴を促進する「響き型」があります。おもり型は引き算、響き型は足し算のサウンド改造をすると考えられます。アクセサリー有りの状態と、無しの状態でサックスを吹き比べるとき、それが「足し算」か「引き算」なのかを考えてみてください。足し算であれば、そのアクセサリーの接触面積を「減らす」ことでより効果が出る場合が多いようです。引き算の場合は逆に接触面積を増やします。接触面積の増減は、アクセサリーの取り付けネジを締めたり緩めたりしても効果があります。また、アクセサリーを付けるサックスの場所が、どのように振動しているかも重要なポイントですので、リガチャーやネックのおもり等は、微妙な位置の操作で効果が変わります。アクセサリーの働き方を考えれば、細かい「自分流」の改革が可能です。
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