1945年、フロリダ州タンパで生まれたデビッド・サンボーンは、今年74歳で現役バリバリのアルトサックス奏者です。幼少の頃小児マヒにかかり、医師のすすめでリハビリとしてアルトサックスを始めました。角度のきつい独特なアンブシャはその影響と言われています。 15才の時にはすでに地元のブルース・バンドでプレイし、アルバート・キング等のミュー ジシャンと共演しています。大学で音楽を学んだ後、スティーヴィー・ワンダー、デヴィッド・ボーイ、ローリングストーンズ等のツアーメンバーとして演奏したり、B.B.キング、ジェイムス・ブラウンらのレコーディングに参加したりと、トップ・スタジオ・ミュージシャンとして活躍しました。その後ポール・サイモン、ジェイムス・テイラー、リンダ・ロンシュタット、カーリー・サイモン、チャカ・カーン、イーグルス等のレコーディングにも参加し、彼の独特なサウンドによって個性溢れるアルトサックス奏者として注目されるようになります。 そして1975年、ワーナーブラザーズから初リーダー作『テイキング・オフ』を発表。1980 年発表の『ハイダウェイ』は大ヒットし、ゴールドディスクを受賞。1981年には『夢魔』 でグラミー賞最優秀R&Bインストウルメンタル賞を受賞し、現在も唯一無二の、ジャズ/フュージョン界No.1のアルトサックス・プレイヤーとして支持されています。
デビッド・サンボーンを「新しいアルトサックスを作り出した」と形容する音楽ファン達がいます。それだけ彼のアルトサックスの音色はユニークで、それまでに無かった「新しいサックスの音」を聴衆に届けました。ハイバッフルのメタルマウスピースで、シャープでパ ーカッシブなサウンドを奏でるアルト奏者のほとんどが、デビッド・サンボーンの信者です。 極端な話し、アルト奏者は「サンボーン系」と「それ以外」に区分しても良いくらいだと思います。それだけサンボーンは個性的です。
虚実入り混じったサンボーンの「個性」を確認してみましょう。ブリルハート・レベルエアやデュコフ・メタルなど、マウスピースは一貫して「細身のハイバッフル」。楽器はすべて14万番台のアメセル・マークVI(3–4本所有:本人談)。楽器全体のネジをすべて弛めることで、響きが得られるとのこと。サムフックが動くほどネジがゆるいし、ネックジョイントもスカスカ。とにかく生音がでかい。煙草も酒もやらず、食生活には特に気を遣っている。毎日パパイヤをたくさん食べるらしい。リードはバンドレンV16の3-1/2…、あ、厚い (汗、デュコフのD8にこんな硬いリードでは、普通音が出ないと思います)。リガチャーはハリソンのゴールドプレート。サンボーンのファズトーンはとりわけ凄い。良く使うのはハイFとハイF#の高音域。捻って出すグロートーンとは似て非なるもので、ファズトーンは重音奏法(複数の音を同時に鳴らす)のひとつ。サンボーンの奏法を解説している本は結構ある。 リーダーアルバム24枚、グラミー賞6回受賞、ゴールドディスク8枚、プラチナディスク 1枚。うん、やっぱ、サンボーンは凄い。
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