サックスの部品や小物の中で、最も失くし易いと言われているのが「マウスピースキャップ」 です。サックスを吹くときには不要なので、どこかに仕舞わなければならない。吹き終わったらマウスピースに被せるのがお作法だが、ま、時々忘れる。そんなことをしているうちに、 ポケットに入れておいたはずのキャップが見当たらない。練習時なら、どこかから見つかることも多いのですが、サックス奏者が大勢出演している、ライブやコンサートなどでは失くしてしまう場合も少なくありません。そんなキャップについて考えてみましょう。
失くし易いマウスピースキャップですが、いざ失くすと後が大変です。マウスピースの形状、使っているリガチャー、締める位置、リードの厚さ等、かなり複雑な形状の条件をクリアし、「リードとマウスピースの先端を、外部の衝撃から守る」という重要な役割を果たしていますので、代替品を探しても、「ゆるゆる」、「きつくてダメ」、「リードに触る」、「リガチャーに当たる」、「グラグラする」等、許しがたい「不適合」となる場合がほとんどです。 金属製のキャップなら、多少「ひん曲げて」形を整えることが出来ますが、プラスチック製のキャップでは、おおまかに合うサイズのものを切ったり削ったり、内側にテープを貼って厚さを変えたりしなくてはなりません。所在不明になったキャップを探しているうちに、誤ってマウスピースの先端に触れ、マウスピースの先端やリードを破損した、なんて話は珍しくありません。「マウスピースキャップは、いつでもズボンの左ポケットに保管」などと決めておいたほうが良いですね。
マウスピースキャップは、マウスピースの先端やリードをカバーし、外から触れられて傷付くのを防ぐ、という「対衝撃対策」に加え、リードを乾燥から守る、という「対乾燥対策」 という役割も担っています。最近ではプラスチック製に替わっているオットーリンクメタルマウスピースに付属のキャップですが、かつては金属製で先端に穴が開いているものでした。 このような「穴あきキャップ」は穴からリードが見えるので、「差し込み過ぎ」でリードを傷付けることを防げましたが、穴からの空気でリードが乾燥し易いため、透明のセロファンテープで穴を塞いでいたサックスプレーヤーが多くいました。丸い金属板をロウ付けして穴を塞ぎ、ご丁寧にメッキを掛け直す、というこだわり派も珍しくありませんでした。
フランソワ・ルイのスマートキャップやシルバースタインのオムニキャップは、キャップというより「プロテクター」と言えそうな、マウスピースの先端からリード部だけをカバー する形状です。セオワニのマウスピースに付属のキャップも類似の形状ですが、リガチャー の特殊形状により、もはや「被らなくなったキャップ」時代のキャップと言えるでしょう。 これらの新しいスタイルには、究極の機能美の風格さえ感じます。
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