サックス系のSNSを覗いていると、「アルトを吹いている初心者です。メイヤーの5MMを買う予定ですが、これに合うリガチャーを教えてください」、という類の相談が高い頻度で投稿されています。マウスピースとリガチャーの相性は、サックス吹きにとってかなり重要度の高い案件です。
「マウスピースとリガチャーの相性」問題の根本の原因は、マウスピース付属のリガチャーの品質の低下に起因していると思います。50年前のメタルオットーリンクには、それはしっかりとした造りのリガチャーが付属していました。ベルグラーセン然り、メイヤー然りです。そもそも、単独売りのリガチャーそのものが稀有な存在でした。そんな時代の優秀な付属リガチャーは、今では「ヴィンテージ・リガチャー」として高値で流通しているくらいです。そして近年のリガチャー単独売り製品の台頭と、マウスピース付属リガチャーの品質低下は、まったく無関係ではないと思います。マウスピースとリガチャーは、そもそも製造の基本技術や設備がまったく異なりますから、お互いに「餅屋は餅屋」で専門化してきたのは当然の流れでしょう。マウスピースブランドの中には、完全に割り切ってリガチャーを最初から付属させないモデルも多数存在し、現在では「付属リガチャー無し」が多数を占めているような気がします。また逆にセオ・ワニのマウスピースのように、独自開発の特殊なリガチャーが必ずセットされており、そのサウンドをマウスピースとリガチャーが一体となって支えているマウスピース・セットもあります。
自分のマウスピースにはどんなリガチャーが向いているか、という質間には、実際にリー ドを装着して、自分のサックスで吹いてみるという、「試してみなきゃ分からない」が唯一の答えです。構造的なもの、サウンド的なもの、吹奏感の違い等、その相性には多面的な要素が関係し、無数の組み合わせが存在します。同じテナーでもハードラバーとメタルではマウスピースの太さが大きく違います。太さも違えば、ボディのテーパー(太さの傾斜)も異なります。テーパーが合わなければ、マウスピースとリガチャーの間に隙間が生じ、サウンドエネルギーの浪費につながります。また、奏者がどの程度リードを締め付けたいかによっても、合致するリガチャーのサイズは異なります。ネジの「余り」の部分の大小がこれに影響します。かつては2本ネジリガチャーがほとんどだったため、前後のネジの絞め具合を変えて、「自分の吹奏感」を作る奏者も沢山いました。ただ、現代ではその「不均一性」がサウンドに悪影響を与える場合が多いとされ、その結果、1本ネジのリガチャーが数多く出回っています。一本のネジでリガチャーベルトを締めるため、リードを平均的に締め付けられるとのことです。今大流行の高級リガチャー、シルバースタインも特殊な一本締めですね。
「マウスピースとリガチャーの相性」に正答はありません。楽器屋さんの店頭で悩みまくってください。
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