サックス 演奏

サックス偉人伝:ベン・ウェブスター

*「テナーサックスは、人間の肉声に最も近い楽器」、と良く言われますが、ベン・ウェブスターのテナーサックスのサウンドを耳にしたら、「なるほど、なるほど」と100回くらいはうなずくでしよう。ベン・ウェブスターのテナーは、ときには囁き、ときには捻り、端ぎ、 鳴咽し、歓喜に吠え、咆哮します。
スイング期の三大テナーとして、コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングと並び称されたベン・ウェブスターは1909年、カンザス・シティの生まれです。三大テナーに共通して言える特色は、メロディアスで流麗であることです。モダン・ジャズ期の多くのサックス奏者は、メロディアスであることを敢えて避けており、ある意味では聴きづらいジャズとも言えます。しかし彼ら旧世代のサックス奏者は、ヴォーカリストが歌うかの如く、メロディを感情たっぷりに演奏しています。単純ですが分かり易く、心地良いサウンドです。代表的なアルバム、「ソウルヴィル(SOULVILLE) 」は1957年吹き込みで、世はハード・バップ全盛期です。そんな時代に、大御所ウェブスターが放った実に直球な作品では、骨太なスウィング・サックスをたっぷりと聞くことが出来ます。当時気鋭の若手ピアニストだったオスカ ー・ピーターソンがサポートし、更にハーブ・エリスがギターで参加、ベースは巨匠レイ・ブラウンと、素晴らしいメンバーによるクインテット構成です。
 ベン・ウェブスターはプロデビュー以来、ベニー・モーテン楽団、フレッチャー・ヘンダ ーソン楽団、ベニー・カーター・バンド、デューク・エリントン楽団等、数多くの名バンドに在籍しましたが、デューク・エリントン楽団の花形ソリストとしていっきに有名になりました。三年間エリントン楽団で活躍したベンでしたが、なんと御大エリントンとケンカしてバンドをクビになってしまいました。その後は主に自己のバンドやセッションで活動し、数多くの名作を残しており、ベンにとっては「独り立ちする良い機会」だったのかもしれません。エリントン楽団では、伝説のアルト奏者、ジョニー・ホッジスとの出会いもありました。 ベンによれば、ホッジスこそが彼に、「サックスをどのように演奏したら良いか」を教えてくれた人物だということです。ビッグバンドのアルト奏者には、神のように崇められているホッジスですが、彼の流麗にして滑らかなフレーズや、包み込むように暖かなサウンドは、 確かにベン・ウェブスターに受け継がれているのかもしれません。
ベン・ウェブスターというとオットーリンク社のメタルマウスピース、マスターリンク・フォースターを愛用していたことで有名です。この時代のマウスピースは現行のものと設計が異なり、かなりマウスピース全体が小さく、大きな音が出し難かったようです。その小さなマウスピースの中を大きくえぐったラージチェンバーによって、ベン・ウェブスターの豪快なサウンドが実現されていたようです。色々考えると、是非ベンには現行のパワー系のマウスピースを使ってもらってみたかったです。きっと、もの凄いサウンドを聞かせてくれたことでしょう。
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