梅雨の時期から夏場にかけて、日本の多くの地域はもの凄い「湿気」に覆われます。ジメジメ、ムシムシと人間にもキツイ季節ですが、楽器達にも過酷な季節です。サックスも例外ではありません。
サックスは管体が金属で出来ているので、木管楽器の中では湿気には強いほうです。クラリネットやオーボエは、過剰な乾燥と湿気の繰り返しを被ると、管体自身が割れてしまう場合があります。恐ろしいですね。サックスの湿気対策の注意の対象は、金属面への結露、そしてパッドとコルクです。暖かい空気は水分を沢山蓄えることが出来ますが、冷えると水分の保有能力が落ちます。これを飽和水蒸気量と言い、温度が高いほど沢山水蒸気を抱えることが出来ます。そして温度が下がると飽和した水分を外に出し、それが水滴となって液体化します。それが結露です。サックスの基本的な結露は、奏者の体内から出た温かく湿った息がサックス管体の金属によって冷やされ、管体内部に付着する水分です。サックスをしばらく吹き続ければ、ベルの底には流れ出るほどの水が溜まります。演奏だけでなく、暑い野外からエアコンで冷えた室内に楽器を運んだだけでも結露は生じます。そして管体内の水分は、ホコリを取り込んで固まり、パッドとトーンホールの間に隙間を作ったり、金属面を錆びさせる原因となります。演奏後は必ずクリーニングスワブを管体内に通し、水滴をぬぐっておくという手間が重要です。
サックスの重要な部品、パッドとコルクにも湿気対策は必要ですが、実を言うと重要なのは、湿気対策というより「乾燥対策」です。パッドもコルクもある程度水分を帯びているほうが好ましい状態です。適度に水分を含むことでしなやかさと弾力を保ち、息漏れを防いだり、キー操作のショックを和らげたりの役割を果たすことが出来ます。しかしパッドもコルクも、乾燥するとカチカチになってしまいます。そうなるとそれぞれの役割に支障が出てきます。一番避けたいケースが、ビシャビシャに濡れた状態からカラカラに乾燥し、またビシャビシャに湿るという繰り返しです。この最悪の繰り返しによって、ご想像通りパッドもコルクも曲がり、歪み、場合によっては「外れ」ます。こうなったら、もう入院です。
梅雨から夏の時期にかけては、サックスを湿気の多い状態に放置することは避けてください。ただし過剰な乾燥や高温も良くありません。サックスケースに乾燥剤を入れる方がよくいますが、程度問題です。ケース内の余分な水分を吸収し、カビや雑菌の繁殖を防ぎ、嫌な臭いを防ぐ程度が適当です。乾燥しすぎないよう注意してください。サックスを車の車内やトランクに長期間放置するのも良くありません。この時期には、サックスのケースの蓋を開けた状態で部屋で保管する、というサックス奏者も少なくありません。
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