偉人と呼ぶにはあまりに若いかもしれませんが、日本ジャズ界の歴史に残るサックス奏者だと確信しています。その人の名は寺久保エレナ、1992年4月30日北海道札幌生まれの26歳のアルトサックス奏者です。ついこのあいだ、高校を卒業してバークリー音楽院に入学したと思っていたら、いつの間にかこんなに大人になっていました。
ニューヨーク在住のジャズサックス奏者、寺久保エレナの音楽人生は「神童」から始まりました。19歳のときM&M’s(チョコレート)のサックスを持ってる人形をもらって、それがカッコいいな~と思い、それで両親がジャズのライブに連れて行ってくれて、そこからジャズとサックスにハマリました」、とサックスとの人生を早くにスタートしました。12歳で地元札幌のSJFジュニアジャズオーケストラに入団。中学生のときにピアノの山下洋輔に見い出され、新宿ピットインで共演。17歳でボストンバークリー音楽院サマープログラム「Jazz Work Shop」に選抜され5週間のボストンでのキャンプに参力。その翌年にはなんとキングレコードからアルバム「NORTH BIRD」でメジャーデビュー。ピアノに帝王ケニー・バロン、ベースはクリスチャン・マクブライド、ギターにピーター・バーンスタイン、ドラムはリー・ピアソンという最強のリズム隊の共演でニューヨークにて録音。このときはまだ高校3年生です。同年に東京JAZZ 2010で、ロン・カーター(b)、オマー・ハキム(ds)、ウィル・ボウルウェア(pf)と共演。高校卒業直後の2011年6月にはケニー・バロン、ロン・カーターらを迎えた2ndアルバム「New York Attitude」をリリースし、その年の9月、バークリー音楽院に日本人初のプレジデンシャルスカラーシップ生として入学。なんと授業料も寮費も全部免除の特待生です。バークリー在学中に、2012年にはプレイボーイ・ジャズフェスティバル、モンタレー・ジャズフェスティバル、ボストンでのビーンタウン・ジャズフェスティバル等に出演し、その年「New York Attitude」をリリースし、北米デビューを果たしました。2013年(21歳)にはもう自己のカルテットでブルーノート東京に出演と、学生時代からとんでもない活躍ぶりです。バークリー卒業後は拠点をニューヨークに移し、世界中で活躍し、2018年には5枚目のアルバム「リトル・ガール・パワー」をリリースしています。
寺久保エレナは早熟なだけではありません。日本人には稀な、卓越したグルーヴ感を有し、バラードから撃速テーマまで、バップからファンクまで、あらゆる形の音楽で、「自分のサウンド」を存在させ続けることの出来る、唯一無二の個性を持ったサックス奏者です。彼女は現在セルマー社と契約し、同社のリファレンスモデルを使用していますが、小さい頃のヤマハやその後のヴィンテージマークⅥ時代と、ほとんど音が変わっていない感じすらします。雑誌のインタビューに、「新しい音楽は、新しい楽器でやるほうが向いてる気がする。」と答えています。どんな楽器でも、彼女の切れ味の良い、芯のあるサウンドは、まさに彼女だけの「オンリーワン」のサウンドのだと思います。
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