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サックス偉人伝:ポール・デスモンド

*ポール・デスモンドは1924年、ポール・エミル・ブレイトンフェルドとして米国サンフランシスコに生まれました。12歳でクラリネットを始め、後にサックスに転向。19歳にしてプロデビューし、ウェストコースト・ジャズを代表するサックス奏者、作曲家となりました。彼が21歳になったとき、皆に知られるポール・デスモンドに名を変えました。その理由について本人は、「名の響きからアイリッシュ系であることを取り沙汰されるのが嫌だった」、と述べていますが、友人らの証言では諸説入り乱れており、真実はポールの胸の中、という事になっているようです。
 ポール・デスモンドについてはデイヴ・ブルーベック抜きでは語れないでしょう。ポールは1946年、ジャズ・ピアニストのデイヴ・ブルーベックのバンドに参加しました。1967年に至るまで、このバンドで多くのアルバムを発表しますが、特にアルバム「Time Out(1959年)」に収録された、ポールが作曲した5拍子の楽曲「テイク・ファイブ」が評判となり、世界中で大ヒットしました。そう、誰もが知っている、あの「テイク・ファイブ」です。実際にはポールとデイヴがアイデアを出し合って作った曲と言われていますが、あえてデイヴがポールに作曲者としてのクレジットを譲ったようです。ポール・デスモンドはデイヴ・ブルーベック・バンドでの活動以外では、ジェリー・マリガンとも度々共演しました。1950年代中期からは、バンド・リーダーとしての活動も多くなり、ウェストコースト・ジャズの旗手のひとりとして活躍しました。コニー・ケイ(モダン・ジャズ・カルテット)やジム・ホール等がポールのサイドマンを務め、多くのレコーディングを残しています。プロデューサーのクリード・テイラーのCTIレコードが創立されると、ポールも同社の専属となりました。ジャズ専門誌「ダウン・ビート」の読者人気投票で、アルトサックス部門の首位をしばしば獲得する活躍をしていましたが、1977年52歳のとき肺癌で他界しました。

 ポール・デスモンドのアルトサックスのサウンドは、まさに唯一無二の「ポール・サウンド」でした。柔らかくて甘い音でありながら、ある意味硬質でしっかりとした芯があり、遠くまで届く鋭さを持っている…。まあ、文章での表現はどうやっても本質を語ることは出来ないでしょう。とにかく録音を聴いてください。多くの一流プロサックス奏者たちが、ポール・デスモンドのサウンドに感動し、研究し、彼のサウンドの秘密を探り、その魅力に少しでも近づこうと努力しています。しかし、セルマーSBA(Super Balanced Action)にフレディ・グレゴリーの広めのマウスピース。それにやや硬めのリードというポールのセッティングを真似ても、彼の音は到底出すことが出来ないようです。有名な彼の語録のひとつに、「ドライ・マティーニのような音を出したい」というフレーズがあります。そう、まさにドライ・ジンとドライ・ベルモットのステアカクテル(シェイクしない)に、オリーブが添えられている…。そんなサウンドなんです。
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