サックス お手入れ

フェルトの話し

*サックスという楽器はピカピカ・メカメカしてる割には、「色味」に欠ける工業製品です。楽器全般に渡って色味の豊富なものは多くはありませんが、歴史の古い楽器の「工芸的な美しさ」に比べ、サックスが放つオーラは直球的な「機能美」であり、アート性もベルの彫刻が担っている程度です。そんなサックスに、野に咲く小さな花のようなささやかな色味をもたらしているのが「フェルト」です。大げさですか?ならば、サックスの各所に散らばる、赤や緑のいくつかの小片が無くなってしまったら、サックスがいかに味気ない見栄えになってしまうか想像してください。あの緑や赤、結構決まってますよね。
 あらぬ方向から攻め始めましたが、サックスのフェルトは決して飾りではなく、機能上不可欠なものです。そして各メーカーが、味も素っ気も無い黒や自のフェルトを選ばないことは、サックスのデザインにフェルトの色がいかに貢献しているかを物語っていると思います (大げさですか?)。サックスでフェルトが使用されている場所は、左手小指のテーブルキーの連動接触面の衝撃緩和、左手フロントGキーやAキーのカップ接触面の衝突音防止と隙間調整、右手ハイEサイドキーの足の当り止め、Low C、B、B♭カップの開き調整用、といったところです。金属同士が当たる部分に薄いフェルト片を挟んで音や傷を防ぐ事と、円柱状の位置調整可能なフェルトで、トーンホールカップの開きの角度を決める事、そんな役割でフェルトは使われています。ちっちゃいフェルトシートが10枚以下、大小の円筒のフェルトが4個くらい、それがサックスのフェルトの全数です。

 フェルトはサックスにとって決してメジャーな部品ではありませんが、サックスからフェルトが無くなったらどうなるでしょう。キーを操作するたびにサックスが「ガチャガチャ」と激しい音を立て、各音の音程、特に低音部の音程はむちゃくちゃになるでしょう。「フェルトじゃなくても良いじゃん」、と言う方も居るでしょう。事実、欧州の楽器メーカーの多くが業績不振に陥つたとき、あのセルマー社がサックスのコルクやフェルトの代替え品として、「合成ゴム(のようなもの)」を使った時期があったそうです。古参のリペアマンさんの話しでは、それらの部品は貨物船の船倉での高温・高湿に耐え切れず、サックスが日本に付いたときには、ゴムが溶けてべったりと金属管体にくっ付いてしまっていたそうです。ある時期の日本のサックスリペアマンたちは、新品サックスのゴム剥がしに明け暮れた、という話しです。真偽のほどは定かではありません。
 コルクもフェルトも、欠損、劣化に気付き難い部品です。たまには自分のサックスのフェルトやコルクをじっくりと眺めて、その状態を確認してあげてください。
——————————————————————————————–

『イー楽器のお得情報』

返品保証30日+豪華3大特典付き
⇒『AIZENより 2月キャンペーン! 返品保証30日+豪華3大特典付き』

レビューを書いてAIZENゲットのチャンス!
⇒『AIZENお客様の声キャンペーン!』

関連記事

  1. サックス お手入れ

    サックスケース考

    サックスのケースは本当に多種多様ですね。昔は管楽器のケースといえば…

  2. サックス アクセサリ

    サックス吹き用100均グッズ

    最近の100均は奥が深い。かつては、「これが100円?凄い!」が基本…

  3. サックス お手入れ

    サックスのメカノイズ

    サックスという楽器はメカニズムの塊です。機械的な仕掛けが複雑に絡むこ…

  4. サックス お手入れ

    サックス解体新書:ポリッシュ

    サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なア…

  5. サックス お手入れ

    ネックソケットの掃除

    ネック下部のサックス本体と繋がるパイプをネックソケットと言います。他…

  6. サックス お手入れ

    サックス臭の対処法

      始末が悪いのが、ヴィンテージサックスやそれに付属してきたケース…

previous arrow
next arrow
Slider

最近の記事

アーカイブ

2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
PAGE TOP