楽器屋さんやネットショップには、様々な形のサックスストラップが溢れています。おぶい紐のようなハーネス型、肩に掛けるフック型、ズボンの後ろに留めるズボン吊り型、スリングのV字を押し広げるワイドスライダー型等々、形や仕組みが多種多様な、「サックス吹きの体に優しいストラップ」が数多く出回っています。かたや昔ながらの、「ペルトにひも」のストラップも健在です。サックス奏者にとっては切っても切れない縁のストラップを、細かく考えてみましょう。
サックスストラップに対する恒久的な悩みはいくつかあります。首にサックスの重量が集中し、肩こりや頸椎ヘルニアを起こす、とか、サックスの重さで首が絞められ、喉が開け難い、なんて悩みもあります。ま、単純に書けば、「重い」とか「痛い」とか「苦しい」でしょうか。それ故に斬新な機構のサックスストラップが多数開発され、それらはかなりの数のサックス奏者に支持されています。ストラップに悩みを持つサックス奏者が、沢山いるという事でしょう。しかしサックス奏者の友人達の中には、まったく「重い」、「痛い」、「苦しい」を頓着しない人達もいます。彼らはむしろ、スライダーの安定性やストラップフックの材質、外れ難さなどにこだわっています。細いベルトのストラップなのに、「別に痛くねえし、喉も閉まらない」と言ってのけます。そんな「こだわらない派」の演奏姿勢を観察すると、共通点が見つかります。まずストラップのネックベルト部分が、首の付け根に置かれています。「首でサックスを吊る」、というより、首の付け根の肩との境界でストラップを支える、といった感じです。またサックス奏者特有の「猫背」にも特徴があります。やや背を丸めるのと同時に、腰をちょっと突き出しています。これは結果的に、身体の重心の垂直線に対し、サックスが近くなります。多くのサックスプレーヤーが知らず知らずにしてしまう。「身体という釣竿から垂れた糸の先にサックスをぶら下げる」ような姿勢ではなく、サックスがぴったりと体に密着し、横から見てもストラップはほとんど見えない状態です。これが「重い」、「痛い」、「苦しい」が回避できる演奏姿勢のようです。
ストラップは出来るだけ首の付け根で受けましょう。イメージ的には「鎖骨」に乗せる感覚です。ワイシャツ等の硬い襟の服を着ていたなら、その襟の外側に回します。アンブシャ(マウスピースを咥える角度)の為に背を丸める場合は、やや腰を突出し、身体のS字を保つようにしましょう。基本、サックスはなるべく自分に近いところで操作します。右手のひらの付け根や右腕の先を、体のどこかに触らせて演奏するのも得策です。演奏姿勢が安定し、サックスの重量も分散します。ここで重要なのは、左右の肩を前方に丸めない事です。コンパクトな演奏姿勢は、往々にして肩で胸を締めがちです。喉から肺、肋骨へのスムースな空気の通りを確保するため、「胸を閉じない」事は重要です。この姿勢を意識すれば、かなり安価な「あたりまえのストラップ」でも、快適に演奏できるのではないかと思います。
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