ベルギー生まれのアドルフ・サックス。名前でバレバレですね。サックスを発明した、サックスの生みの親です。1840年代に現在のサキソフォンを発明し、ソプラノサックスからバスサックスを開発、販売しました。当初サックスは14種類もあったそうです。アドルフ・サックスは優れた楽器開発の技術者であっただけでなく、さまざまな吹奏楽器の演奏者でもありました。彼は、木管楽器の運指の自由度と金管楽器の明るい音色を合体した楽器が作れないかと考え、サキソフォンを考案したそうです。ほとんどの管楽器はその起源をバロック時代以前にまで遡ることが出来、1820年代には現代のトランペットに酷似した3本ピストンのトランペットが発明されていますから、アドルフ・サックスが一から考え出したサックスという楽器は、「もの凄く新しい管楽器」と言う事が出来るでしょう。それまでの多くの管楽器が、管の太さが均一な「円筒管」であったのに対し、アドルフ・サックスは管の入り口から出口まで、その直径がながらかに広がっていく「円錐管」に着目し、多くの円錐管金管楽器も開発しました。これらの金管楽器は「サクソルン属」と呼ばれ、サクソルン属の楽器には、コルネット、フリューゲルホン、アルトホルン、テナーホルン、バリトンホーン、ユーフォニアム、チューバ、等が含まれますが、これらすべてをアドルフ・サックスが開発したわけではありません。
アドルフ・サックスは優れた技術者だった故に、その生涯は特許紛争に明け暮れた日々だったようです。まるで「下町なんとか」ですね。Wikipediaによれば、彼のライバルの楽器製作業者たちは、アドルフ・サックスの持つ特許に対して長期にわたる訴訟を仕掛け、それが原因で彼の会社は2度も破産の憂き目に会うことになったとのことです。長きにわたる法廷闘争はアドルフの健康をも損ね、2度にわたって入院を余儀なくされました。1800年代後半からアメリカとヨーロッパは所謂「第二次産業革命」の時代を迎えており、サキソフォンと同時期の発明品には、白熱電球、タイプライター、ミシン、輪転印刷機、発電機などがあります。まさに新時代の幕開けと同時にサキソフォンは誕生したのです。
アドルフ・サックスは楽器製作に加え、パリ国立高等音楽院のサキソフォン科での音楽教育にも生涯を捧げました。同学のサキソフォン科は1942年に開設され、アドルフ・サックス自身が初代教授を務めました。1870年、財政難により他のいくつかの楽器科と共にサキソフォン科は廃止され、クラスの再開はなんと72年後の1942年まで待たねばなりませんでした。そして、当時すでにサックス奏者としても教育者としても名声の高かったマルセル・ミュールが、アドルフ・サックスの跡を継ぐことになったのです。最後に20世紀ドイツを代表する作曲家、指揮者、そしてヴィオラ、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノなど様々な楽器を弾きこなす多才な演奏家であったパウル・ヒンデミットの言葉を引用します。「18世紀末から管弦楽が急速な進歩をとげ、その要求を満たそうと新しい楽器がたくさん現れた。しかしその中で、生き続ける能力と重要さを持っていたのは、サキソフォンだけだった」。やっぱりサックスって凄いですよね。
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