サックスのキーのローラーを意識したことはありますか?左右の小指の動きを滑らかにするためのローラーで、キーの乗り換えをスムーズにし、早いフレーズを補助します。ローラーの付いたキーはフルートやファゴットにもありますが、サックスのキーローラーには他の楽器に無い特徴があります。
サックスのローラー付きキーは、低音域の大きなパッドを押さえるためのキーです。力を加えたいキーなので、小指の力が効率良くキーに伝わるように、独自の工夫がなされています。それは、キーのブロックがお椀の底のようなアーチを描いている、ということです。フルートやファゴットのローラー付きキーにはあまりこのような工夫はされていないようですので、ひょっとしたらアドルフサックスさんがサックスの構造とともに登録したの特許のひとつなのかもしれません。右手小指キーのローラーは単純です。小指をドとミ♭のキーとの間を滑らかに移動させるためのものです。左手小指のローラーは、ド#、シ、シ♭の三つをつなぎます。さて、これらのローラーと運指の動きをじっくりと見ていきましょう。
小指を素早く動かすためには、キーの押さえ方は場合によって変わります。具体的に言うなら、ある程度ゆっくりした指の動きの場合、押す力を最大限にするために、小指の先端に対する直線的な力でキーを押さえます。そのときにはローラーもあまり活躍しないでしょう。しかし「ド・ミ♭・ド・ミ♭・ド・ミ♭・ド・ミ♭」のような右手小指の速い動きにはローラーは活躍しますが、あれ、指の動きが違います。ミbを押していた小指は、倒れ込むようにしてドを押さえていませんか。小指の先端ではなく、小指の右腹あたりでキーを押していませんか。もちろんこういった指の動きは奏者によって千差万別です。奏者の癖や指のコントロールの力の入れ方などによって、右手小指の動きと押さえ方は異なります。このような理由から、ド側のローラーを「回らなくする」プレーヤーもいるようです。いわく、「倒れ込む指を早くキーが受け止めるためには、ド側のローラーは動かないほうが良い」、とのことです。
サックスの左手小指の動きには、また別のお作法があります。まずド#とシのトリルは物理的にほとんど不可能です。でも諦めの悪い奏者はここのローラーを大きく滑らかにし、かつキーの角度を調整して、少しでも素早い運指の転換を可能にしています。シ♭を出す場合には、小指の先端はほとんど動かさず、左手小指の左の腹でシ♭キーを押す方が多いようです。これが一番力が入る指の置き方です。セルマー・マークVII以降、「大きいことは良い事だ」傾向のシ♭キーですが、素早く閉めるために、「ぼくは左手小指の付け根で押してるよ」という方も少なくありません。ローラー絡みのキーの使い方は、ほんと、結果オンリーだと思います。
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