楽器って、思わぬミスで故障させてしまう場合が少なくありません。サックスもそのメカの複雑さゆえに、「やっちまった!」というケースが多々見られます。サックス奏者が練習や本番で遭遇しがちな小さな故障と、その対処法や簡易修理道具についてお話しします。
冬場にセーターなどを着こんで、モコモコの状態でサックスを吹いていると、ちょっとした動作で服にサックスの針バネが引っかかってしまい、バネの外れを起こしたり、ひどい場合にはバネがあらぬ方向に曲がってしまう場合があります。針バネの修理には普通「バネ掛け工具」を使用します。バネ掛け工具はバネを引っ掛ける「カギ」と、バネを押す「Y字溝」を有する棒状の工具で、ネット等で入手することが出来ます。とはいえ私たちは専門のリペアマンではないので、立派な工具は宝の持ち腐れになるでしょう。バネ掛け工具の代替えとして、100均で入手できる「編み物用のかぎ針」が使えます。かぎ針には「バネを押すY字溝」はありませんが、バネを押すのは指でも鉛筆でも可能です。狭いところから針バネの先端を引っ掛け、バネ受けの溝にはめるのは、指等では難しい作業ですが、編み物用のかぎ針で充分専用工具の代用が可能です。バネの外れの場合だけでなく、パッドの閉まりが弱いとか、クローズキーの開きのスピードが遅いとか、バネの強さを調整したい場合にもかぎ針は役に立ちます。かぎ針の先端で該当箇所のバネを外し、バネをしごいて曲がり具合を調整し、かぎ針でモノの位置に戻す。こんな調整もかぎ針があれば簡単です。
バネが折れたりバネ受けが欠けるという、致命的な故障が突如演奏中に発生する場合もあります。バネが無いので、故障個所はブラブラとなります。こんなときに活躍するのは「ゴム」。輪ゴムよりも女性が髪の毛に使用する「ヘアゴム」が使い勝手が良いでしょう。使い方は故障個所によってそれぞれですが、壊れたバネの替わりの「張力」が再現できるように、ゴムをパッドのアームに引っ掛けて、ぐるりと回してどこかに止めたり(パッドを開ける場合)、逆にパッドを押し付けるように、ゴムを管体に巻きつけたり(パッドを閉める場合)、とゴムは大活躍です。ちょっとメカニズムに関するセンスが必要ですが、上手くゴムで修理できれば、サックスは演奏可能な状態になります。基本は「引っ掛けて」、「巻きつける」ですが、余計な部分を「避ける」のもコツのひとつです。
パッドを押さえるコルクやフェルトの調整が狂う故障もあります。これらは調整ネジの締め具合で高さ調整をします。右手人差し指キーとBisパッドの連携の調整コルクには小さめのマイナス時計ドライバー、ペル部のパッドの「開き具合」を決めるフェルトの高さ調整には大きめのマイナスドライバーかコインがあると便利です。このへんになると、故障個所を見つけるのにちょっとノウハウが必要かもしれません。
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