楽器屋さんでも、またネットのあちこちでも、「初心者向けアルトサックスセット」とか「初心者に最適!お手頃サックス」等のキャッチコピーが溢れています。また、「初心者向けのマウスピースは何か良いですか?」や「初心者でも出来る練習方法を教えてください。」なんて質問も良く見ます。改めて、少し真剣に「初心者向け」とは何を指しているのかを考えてみました。
「初心者向けサックスセット」というのは、誰もが想像できるように、サックスを始めたばかりのひとが、「サックスを吹く」という行為を続けるための楽器本体や、必要な小物をすべて取り揃えたものです。楽器本体にケース、マウスピースにリード、ストラップ、クリーニングクロス、掃除用スワブ、コルクグリス、吸水ペーパーあたりのセットが標準的でしょうか。どうせならサックススタンド、譜面台、電子メトロノーム、電子チューナー等も付属していたら完璧度が格段に上がりますね。あ、出来たら、「これを聴くべし!」なんて、歴史的サックス奏者の名前と音源(CD等)のリストなんかも付けてくれたら、初心者サックス奏者さんは、嬉しくて飛び上がるのではないでしょうか。この場合の「初心者」は、今までサックスに全く関係のない生活を送っていて、「さあ、これからサックス生活を始めるぞ」という人を指している訳ですね。多くの場合初心者セットは、比較的安価に供給されています。「これから一生、濃厚にサックスを吹き続けるための、スペシャル初心者セット」と銘打って、高級機種のサックスに人気のある周辺小物を揃え、マウスピースは数種類、リードなんかは数種でいくつもの番手のリードを付けたらどうでしょう。多分軽く百万円は超えると思いますが…。
「初心者向け」という言葉は「標準的な」という意味でも使われるようです。マウスピースならセルマーのD、メイヤーの5M、オットーリンクの7*とかのティップオープニング、リードであればMIDIUMや2-1/2の「真ん中」の番手が初心者に勧められるようです。しかしこれらはあくまで「標準」であり、奏者の感覚や個性、個人的身体特性によって、いずれは多くのサックス奏者が標準を離れていきます。そう考えると、「まずは標準のセッティングで吹いてみて」というのは、必ずしも正しいとは言えないかもしれません。出来る事なら初心者であっても、色々なティップの広さのマウスピースを試し、かつ色々な硬さや個性のリードを試してみるのが良いと思います。リードは試奏が出来ませんし、マウスピースのバリエーションは無限ですので、現実的にはそう簡単なことではないんですけどね。
この様に考えてみると、「初心者」には優れた「指導者」のアドバイスが必須であり、これからの彼・彼女のサックス人生を、楽しいものにさせるのも、上達の近道を歩ませるのも、その指導者次第という事を感じます。優れたサックスの指導者は、その生徒さんとしっかりと会話し、体格を観察し、練習環境を類推し、そのひとに最適な「サックスの始め方」を考えてくれるはずです。確かにサックスは、それだけ面倒臭い楽器です。サックスは管楽器の中でも、一番指導者との出会いが重要な楽器なのかもしれません。
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