ご承知のように、サックスという楽器は、他の管楽器に比べて歴史の浅い楽器です。発明されてから、まだ約170年。600年以上の歴史を持つと言われるトロンボーン等の金管楽器に比べたら、まだひよっこの若造です。しかし、若いが故の利点もあります。新しい工夫がふんだんに次々と取り入れられ、まだまだ「進化中」の楽器がサックスでしょう。サックスの進化を助けている、新しい科学のディープな部分を見てみましょう。
最近注目されている技術のひとつが、「マウスピースの振動をネックにダイレクトに伝える」技術です。マウスピースとサックスネックの間にはネックコルクが介在し、マウスピースからの振動を吸収してしまっています。この「吸収された振動」をしっかりとサックスの本体側に渡してあげれば、サックスの鳴りが大きく向上する、という理屈です。ネックとマウスピースの間に金属の部品を渡し、ゴムでそれを固定することで、演奏中のマウスピースの振動を、サックス本体側に効率良く伝える、という管楽器用のアクセサリーがあります。このアクセサリーはサックスだけでなく、トランペット等の金管楽器やフルートのヘッドとジョイントの間にも使えるそうです。望むサウンドに合わせて、色々な金属素材が選べるようになっています。マウスピースに取り付けられたリガチャーから針金が伸び、その針金がサックスのネックに「触れる」という製品もあります。同じメーカーの製品で、リガチャーから幅の狭い金属バネが伸びており、それがネックにピッタリと接触する、というリガチャーもあります。「ネックコルクで失った振動を生かす!」とは、新しいサックスの科学ですね。
友人のミュージシャンがある実験をしました。ライブハウスのステージに立ち、スニーカー、革靴等、底の硬さの違う靴を数種類履き替えながら演奏し、それらのサックスのサウンドを客席から聴き比べるという実験です。結果は、「明らかに分かるほどの違いが出る」ということです。サウンドの良し悪しは聞き手の好みが決める物なので、硬い底と柔らかい底のどちらが良いとは言えませんが、そのうち「サックス演奏用シューズ」が発売されるかもしれません。
サックスストラップの「科学」も多数あるようです。フックは金属、スリングは紐、というのを「信仰」しているサックス奏者は少なくありません。「ストラップがサックスの振動を吸収するのを防ぐ」、というのが理由とのことです。実際に、ストラップのフックがプラフックの場合と金属フックの場合とで、サックスの音が違ってくるような気もしますが、サックスには奏者の手も触れていますし、右足の腿も触れています。ストラップの素材の影響度は如何ほどのものなのかは疑問です。
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