どんなケースにおいても、「慣れ」が「油断」を生み、結果を悪い方向に導いてしまう場合があります。サックスという楽器の演奏においても、「慣れ」への注意が必要です。演奏技術における「慣れ」は、演奏そのものに余裕を生み出してくれるはずですが、正しくない奏法に慣れてしまうと、思わぬ失敗や、不要な苦労をしなければならないかもしれません。サックス演奏技術の誤解や悪い癖について考えてみることで、悪い「慣れ」から抜け出しましょう。
管楽器を演奏するひとが必ず教えられるのが、「息をいっぱいに吸いましょう」ということです。この「いっぱい」って、いったいどのくらいなのでしょうか。これ以上吸えないというくらい肺を息で満たすのでしょうか?うーん、通常の演奏では息継ぎ箇所も多いので、そんなに息を吸っても無駄になりそうです。そのような「現実」から、サックス奏者は「吸気」を怠けがちになります。長いテヌート等の息が大量に必要なフレーズでは、譜面に「Big Breath」と書き込んだり、パートのメンバーで息継ぎ場所の「談合」をしたりして、息の量の帳尻を合わせるのが通常ですが、これによって「少ない吸気」の癖がついてしまいます。その結果、やたら息継ぎが頻繁になったり、アドリブのフレーズがブツブツに途切れたりする結果を生み出すことがあります。「吸気」は、自分が自然にできる範囲で、「いっぱい」するのがベストです。自分なりの適正な「いっぱいの息」を練習の中で見つけ出し、それに慣れるようにしましょう。少ない吸気に慣れてしまっていないかどうか、時々チェックするのも良いでしょう。
バンドやアンサンブルで、他人の音を聴かないのも、有りがちな良くない癖でしょう。自分の演奏の音だけに集中してしまい、周りの音を聴かないと、音程や発音のタイミングのずれが放置されたり、バンドの音量バランスの崩れの原因となります。楽器初心者の時期は、自分の音に神経を集中させ、いわゆる「いっぱいいっぱい」の状態だと思いますが、楽器に慣れるにしたがって、周りを聴く余裕を作る必要があります。周りの音を聴かない奏者のいるバンドは、いくら練習してもサウンドがまとまりません。合奏をするのなら、ひとの音に自分の音を合わせることに慣れましょう。
首の角度も、サックス奏者の悪い癖になりがちです。左右、上下の首の角度は、そんなに厳密に決めなくてもサックスは音が出ます。しかしその影響は、少しずつ色々なところに出ています。あごの上下は息のリードへの当たり具合を変化させます。リードが最適に振動せず、音が曇ったりもします。下を向き過ぎて、喉が閉まってしまう場合もあります。首の角度は結果的にサックスの位置にも影響します。指が一番軽やかに動く、サックスの位置で構える必要があります。首の角度で運指の自由さを損なっているかもしれません。譜面を見ながら演奏をするビッグバンドのサックス奏者は、首をかしげて譜面にネックが重なるのを防ぐことがあります。そんな場合は、ちゃんとマウスピースを捻って、口に水平に当たるようにしなくてはなりません。悪い首の角度に、慣れないでくださいね。
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